会見リポート
2010年09月30日
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渡邊啓貴・東京外国語大学教授
会見メモ
渡辺教授は国際関係論・フランス政治外交が専門で2010年3月まで2年間、在仏日本大使館公使だった。2010年9月創刊された雑誌「外交」の編集委員長も務めている。最近の日本外交について、外交カードを失い「国難」とさえいえる状況となったと指摘し、新しい現実主義を訴えた。米欧同盟の歴史を振り返りながら、同盟のありかたについて①義務と権利の関係を相互に認識しているか②安全保障共同体(セキュリティ・コミュニティ)の意識がどれほどあるか③秩序を維持するリーダーシップ、責任感があるか――と指摘した。
司会 日本記者クラブ事務局長 中井良則
東京外語大渡辺啓貴研究室のホームページ
http://www.tufs.ac.jp/ts/personal/WIRA/
会見リポート
親米は基軸、一辺倒でも困るが
杉田 弘毅 (共同通信編集委員兼論説委員)
しかし、尖閣に象徴される中国の伸長に直面し、これまでの外交では活路が開けない。安住が終わり、気がつけば閉塞感が居座る日本は、なぜこの苦境に陥り、どう脱せるのか。外交も見直しの対象になる。9月に創刊された専門誌「外交」がその一石を投じるはずだ。
編集委員長である渡邊氏の狙いは「外交論議に新しい視野を切り開きたい。論議を盛んにし皆で知恵を絞る」。欧州の専門家で3月まで在仏大使館広報・文化公使を務めた。その立ち位置は「親米一辺倒でも困るが、親米は基軸」。王道の主張である。
日米同盟が多大な利益をもたらし今後も外交の基軸であることは「国民の合意」だ。だが、同盟が持つ義務と権利の関係は相互に認識されているのか、と問う。確かに普天間は同盟論議でなく、国内の受け入れ地探しと政局論議となってしまった。
日本に求められるのは国際安全保障共同体に属しているという意識だと言う。責任感と価値観を共有する一員として、「われわれ感覚(当事者意識)」を育てる。米欧のようなリーダーシップは無理だが、アジアのリーダーの責任感は持つべきだろう。
暗い話ばかりではない。ポップカルチャーなど日本文化のおかげで、日本ファンはいたるところにいる。日本外交の可能性は確実に広がった。
ポピュリズムにさらされ、弱い政治が混乱に拍車をかける。外交は閉ざされた空間から飛び出た。だからこそ、渡邊氏が言う、本質を外れた議論に走らないような「国民の外交コンセンサス」が望まれる。
ゲスト / Guest
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渡邊啓貴 / Hirotaka WATANABE
東京外国語大学教授 / Professor of International Relations, Tokyo University of Foreign Studies
研究テーマ:同盟論