2006年06月19日 00:00 〜 00:00
大鹿靖明・朝日新聞・アエラ編集部記者「著者と語る『ヒルズ黙示録』」

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会見リポート

金融暴走族と村上“指南”

塩田 宏之 (日本経済新聞編集委員兼論説委員)

ライブドアとニッポン放送、楽天とTBS。昨年相次いだ新旧メディア対決劇の裏には、仕掛け人として村上ファンドの村上世彰前代表がいた──。大鹿氏の著書『ヒルズ黙示録』は丹念な取材の積み重ねで、そんな構図を描き出している。今年に入ってライブドアの堀江貴文前社長と村上前代表が逮捕され、村上ファンドに出資していた福井俊彦日銀総裁にまで問題が飛び火した。それだけに、震源地を観察し続けてきた大鹿氏の発言に注目が集まった。

講演はマスコミ批判で始まった。新聞社や民放の長期政権化といった経営問題に加え、検察の情報に依存しがちな取材現場のあり方にも疑問を呈した。

批判の矛先は検察にも向かう。取材先が「東京地検があらかじめ書いたストーリーを認めないと事情聴取から解放してもらえない」と嘆いていたことを紹介。「検察には政治家、経済人、ジャーナリズムもモノを言えない。戦前の陸軍に似てきた」と語った。

ヒルズ族については、ライブドアの旧経営陣を「金融暴走族」と表現してみせた。制限速度を超えて疾走するが、スピード違反が見つかりそうになると速度を落とすテクニックを持っていたという。彼らに「こちらの道路ならもっとスピードを出せる」と指南したのが村上前代表だったというわけだ。

ただ村上前代表の逮捕に関しては検察批判と絡めて「調べれば調べるほど、インサイダー疑惑が蜃気楼のように消えていく」と語った。しかし、ライブドアをけしかけてニッポン放送の株価を高騰させ、売り抜けた問題は残るのではないか。ニッポン放送争奪戦が提起した問題は、買収者と経営陣の関係に加え、大株主と一般株主の関係にも目を向けて考えるべきだろう。

ゲスト / Guest

  • 大鹿靖明 / Yasuaki Oshika

    朝日新聞・アエラ編集部記者 / Journalist of Aera, Asahi Shimbun

研究テーマ:著者と語る『ヒルズ黙示録』

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