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第2回アジア経済視察団(2002年2月) の記事一覧に戻る

北海道新聞 江尻司 2002年2月

フィリピン訪問の直前、ドキュメンタリー映画「神の子」(四ノ宮浩監督)をみた。主人公はマニラ近郊ケソン市のゴミ捨て場でゴミをあさって暮らす人々だ。ゴミ捨て場は1995年に閉鎖されたマニラのスモーキーマウンテンが前身だ。

 

視察団が短時間ながら訪れたスモーキーマウンテンはすでに埋め立てられ、一部は「ドリームハウス」なるアパート群に変身していた。そのすき間を掘っ建て小屋が埋め、貧困の刻印はなお深い。

 

そこに立って、映画では分からなかったことに気がついた。ゴミ山は強烈な臭いを放つということだ。

 

政府要人の話から、政権が貧困撲滅に必死であることが痛いほど伝わった。しかし閉鎖から7年を経てなお残る悪臭は、その努力をあざ笑うかのようだった。

 

闖入(ちんにゅう)した私たちに屈託ない笑顔を向ける子どもたちの明るい目がまぶしかった。

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