2024年08月06日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「中国で何が起きているのか」(17) 李昊・東京大学大学院准教授

会見メモ

開催が遅れていた中国共産党の重要会議である第20期中央委員会第3回全体会議(3中全会)が7月18日に閉幕した。中国共産党の意思決定における派閥の役割を研究し、『派閥の中国政治―毛沢東から習近平まで』の著書がある東京大学大学院の李昊准教授が、3中全会から読み取れること、個人支配化する習近平体制について分析した。

 

司会 高橋哲史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞社)


会見リポート

体制は盤石 政権は不安定

塩澤 英一 (共同通信社論説委員)

 中国出身の研究者には本国から有形無形の圧力がかかるものだが、李准教授は冒頭から「もうポイントオブノーリターン(後戻りできない点)を過ぎており、いまさら手遅れなので好き放題話します」と宣言された。

 会見前半、7月に行われた習近平指導部3期目の共産党中央委員会第3回全体会議(3中全会)の分析では、会議で出された「決定」が欧米とは異なる発展方式を意味する「中国式現代化」を強調したことについて、「外部からどう見られるかという視点が不足」しており、「外国人は疎外感を感じ、中国は仲良くするつもりがないと受け取れる」と懸念を示した。

 また3中全会は「国家安全」の重視をあらためて強調した。習氏が重用する国家安全省が好き勝手なことをやる結果になり、外国企業からの投資を困難にしているという。

 3中全会の前には、習氏の彭麗媛夫人が政治局員になるといった噂が中国の庶民の間に広まった。荒唐無稽なうわさが広がるのは「政治が何でもありの状況になっている状況を反映している」との指摘は同感だ。

 会見の後半は習指導部のこれまでの執政について分析。異例の3期目を実現したのは①政敵排除②制度的権力強化③権威の強化④勢力拡大⑤暴力装置の掌握―によって鮮やかな権力集中を成し遂げた結果だとした。

 習氏は改革・開放路線にかじを切った鄧小平以降、共産党が築いてきた集団指導制を壊し、習氏に権力が集中する個人独裁に作りかえた。結果、権力基盤は極めて盤石になったようにみえるが、同時に独裁化ゆえに政権運営は不安定になっていると説明。一例として習氏がばってきした秦剛外相や李尚福国防相らの失脚で揺れる政治スキャンダルを挙げた。

 最近は庶民の中に「習氏を小ばかにする風潮がある」という指摘は興味深い。盤石にみえる体制の不安定さをのぞかせる一面だろう。


ゲスト / Guest

  • 李昊 / Hao LI

    東京大学大学院准教授 / Associate Professor, Graduate Schools for Law and Politics, The University of Tokyo

研究テーマ:中国で何が起きているのか

研究会回数:17

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