2016年05月23日 13:30 〜 14:30 10階ホール
「オバマ広島訪問」③秋葉忠利 前広島市長

会見メモ

オバマ米大統領の広島訪問を前に秋葉忠利前広島市長が会見し、記者の質問に答えた。
司会 恵村順一郎 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

日米ともに歴史的頸木から解放を

竹内 幸史 (朝日新聞出身)

会見の冒頭、オバマ大統領の広島訪問を日米両国市民による「啐啄(そったく)の機」と呼んだ。鳥が孵化する時、母鳥とヒナが卵の殻を内と外から同時につつき、卵を割ることを意味する言葉だ。

 

1999年から2011年まで3期にわたり、広島市長を務めた秋葉忠利氏自身、まさに「卵」をコツコツとつつき続けた一人だ。数学者として米国在住だった1980年代から、米国の識者らに広島訪問を呼びかける活動を展開し、レーガン大統領ら歴代指導者にも訪問を要請する手紙を送った。

 

2009年4月にオバマ大統領が「プラハ宣言」を発すると、同年8月6日の広島での平和宣言で熱烈支持を表明した。この宣言に織り込んだのが、「オバマジョリティー」という造語だった。

 

オバマ大統領は、「核兵器を使った唯一の国」として、核なき世界の実現に努力する道義的責任をプラハで明言した。その大統領が軍産複合体の抵抗勢力に取り込まれたり、国際社会で孤立化したりすることがないよう、オバマ支持の声を世界の「マジョリティー(多数派)」に拡大し、核廃絶に向けて強力な国際世論を巻き起こしていこう、という考えだった。

 

翌2010年1月に訪米した時には、核廃絶を支持する全米市長会議の市長らと一緒にオバマ大統領に会い、広島訪問を直接呼びかけた。

 

その一方、広島平和文化センターの理事長には、米国で平和運動をしていたスティーブン・リーパー氏を登用し、平和記念資料館の展示内容の見直しを進めた。米国では原爆投下を肯定する意見が根強いことから、アジアの声も取り込み、展示内容が一層の説得力を持つよう工夫した。リーパー氏らの努力で米国など海外での原爆展開催も大幅に増えた。

 

「オバマ大統領が広島に来ることから全てが始まる」と、長期的意味の大きさを力説する。「これから何人もの米大統領が広島を訪問するようになれば、米国社会を縛っている頸木(くびき)から解放される。大統領が来ることで、原爆投下を正当化しなくてよいという社会風潮が米国に生まれる一歩になれば、米国の歴史観が大きく変わり、米国の超大国としての新しい役割を市民が考えるようになる」という。

 

その上で、日本の課題も指摘した。「日本政府も歴史的な頸木から解放されるべきだ。客観的な歴史観のもとに、アジア諸国との関係を調整する基本に戻る必要がある」と述べた。


ゲスト / Guest

  • 秋葉忠利 / Tadatoshi Akiba

    日本 / Japan

    前広島市長 / Former Mayor of Hiroshima City

研究テーマ:オバマ広島訪問

研究会回数:3

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