会見リポート
2012年06月29日
15:30 〜 17:00
10階ホール
研究会「権力移行期の世界⑧ エジプト」 池内恵・東京大学先端科学技術研究センター准教授
会見メモ
池内恵・東京大学先端科学技術センター准教授が、エジプト大統領選挙と民主化の行方について話し、記者の質問に答えた。
司会 日本記者クラブ企画委員 脇祐三(日本経済新聞)
使用した資料
http://www.jnpc.or.jp/files/2012/07/2ac7ead200cd7b94ee361985ea7e4a0a.pdf
東大先端科学技術研究センター 池内恵氏のページ
http://www.rcast.u-tokyo.ac.jp/ja/people/staff-ikeuchi_satoshi.html
会見リポート
新大統領 当面の課題は軍との共存
松尾 博文 (日本経済新聞論説委員)
エジプトの新大統領にイスラム同胞団出身のムハンマド・ムルスィー氏が決まった。イスラム勢力出身の大統領の下でエジプトは安定に向かうのか。池内氏は「当面の課題は軍との共存、コアビタシオンだ」と説く。
昨年のムバラク政権崩壊後初めてとなる大統領選挙は、「透明性が高かった」と評価する。同胞団が組織力をいかして開票情報を迅速に集め、メディアが権力を監視する本来の力を発揮したことで不正が入り込む余地が少なかったとみる。
10人以上が立候補した第1回投票の結果は予想を裏切る内容だった。1位のムルスィー氏は同胞団の組織力を改めて見せつける一方、軍出身のシャフィーク元首相が2位に付けたのは、「革命の次の段階として、安定を求める層の雪崩現象が起きたため」と分析する。
ところが、暫定統治にあたる軍最高評議会は決選投票にあわせてイスラム勢力が多数派を占める人民議会の解散や軍の権限強化に踏み切った。これがシャフィーク氏には裏目に出た。「同胞団に距離を置く人も、革命が無駄になるとの危機感」からムルスィー氏に票を投じた。
注目しているのが開票結果の発表を当初予定から6月24日まで延期した3日間。この間に「軍と同胞団の妥協が成立した」とみている。
ムルスィー氏が同胞団の宿敵である軍トップと談笑する。「エジプトを長年見てきた者には、ずいぶんシュールな光景」だが、双方が共存を演出してみせることで国民は安心した。
ゲスト / Guest
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池内恵 / Satoshi IKEUCHI
東京大学先端科学技術研究センター准教授 / Asso. Prof., Research Center for Advanced Science and Technology, the University of Tokyo
研究テーマ:シリーズ研究会「権力移行期の世界」
研究会回数:0