2010年11月05日 11:30 〜 13:00 宴会場(9階)
米倉弘昌・日本経団連会長

会見メモ

日本経団連の米倉弘昌会長(住友化学会長)が昼食会で「民間の力で未来を切り開く」と題して話し、質問に答えた。


米倉会長はスピーチで①税・財政・社会保障の一体改革②アジア太平洋諸国との地域経済統合③民間主導の取り組みの3点について、日本経団連と米倉会長の考えを説明した。①については、消費税の社会保障目的税化と税率10%への引き上げを提唱した。②では、日韓EPA、日中韓EPAの推進やTPP交渉への早期参加を求めた。TPPでは「APEC議長国の責務として日本が交渉参加を表明するよう強く求める」と述べた。③に関連して、未来都市モデルプロジェクトなど日本経団連の構想を紹介した。質疑応答では、法人税減税の財源について、減税を先行し、経済成長により税収が上がるとの見通しを示し、「課税ベースを広げる」との菅政権の主張については「効果が出てこない」と反論した。日中関係では、「民間の役割はずいぶんある」と経済交流の重要性を指摘し、「ぎくしゃくしていても、(日中首脳が)話し合えるのは大人になってきた」と語った。民主党が企業献金受け入れを決めたことについて「政治との癒着はあってはならないが、政治献金は企業の社会的責任だ」と述べた。鳩山前首相がCO2の1990年比25%削減を国際公約したことについて「国民のコンセンサスがないままコミットした。どうして政府の言うとおりに同意しなければならないのか」と強い口調で批判した。

司会 日本記者クラブ理事長 斎藤史郎(日経新聞)

代表質問 日本記者クラブ企画委員 小此木潔(朝日新聞)


日本経団連のホームぺージ

http://www.keidanren.or.jp/indexj.html


会見リポート

手堅いデビューだが“らしさ”は?

山田 伸二 (NHK解説委員)

米倉さんが経団連会長に就任されてから半年、記者クラブへのデビューは手堅いものだっ た。経団連が提唱する三つの課題への取り組み、税・財政・社会保障の一体改革、アジア・太平洋地域の経済統合、民間主導の経済再生について丁寧に説明され た。でも、経団連はお役所、組織に乗ってのコメントで特に興味をひくものはなかった。

面白かったのは、質疑応答の中で、「経団連は法人税 の引き下げを求めるが、それが実現しても雇用を増やしたり賃金を上げるはずはない」という批判に対して、「雇用拡大は確約できない」と答えたこと。法人税 の引き下げは、経済の活性化の必要条件かもしれないけれど十分条件ではないだろう。これでうまくいくと大言壮語できるはずはない話で、率直な受け答えに私 は米倉さんの誠実さを感じた。

個人的に興味を持ったのは、若者を海外協力隊に入れて2~3年海外で活動してもらう構想を、関係者に働きか けているという話だった。国内で仕事がないなら活躍の場を海外に移し、そこで農業・医療・教育といった専門分野をいかして仕事をしたら大変な経験になる し、外国の人とのコミュニケーションも勉強できたら、これからの人生にとって有意義だろう。協力隊の人達が困っているのは帰国してから受け皿がないこと だ。経団連は、こうした人達を積極的に雇い入れる気運を高め、雇う仕組みを作ってほしいものだ。

それにしても。米倉さんから、アフリカ向 けに薬品をすり込んだ蚊帳を作った話や、トイレの掃除の仕方でJALとANAのサービスを分析するなど、面白い話を聞いてきた人間としては、米倉さんらし さが伝わってこなかったのが残念だった。経団連の会長ともなると、「かみしも」を脱ぐわけにはいかないのでしょうね。

ゲスト / Guest

  • 米倉弘昌 / Hiromasa YONEKURA

    日本 / Japan

    日本経団連会長 / Chairman, Nippon Keidanren

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