2022年05月10日 13:00 〜 14:00 オンライン開催
「沖縄復帰50年」(6) 宮城修・琉球新報論説委員長、森田美奈子・沖縄タイムス論説委員長

会見メモ

米国が沖縄の施政権を日本に返還してからの50年を、地元2紙、沖縄タイムス、琉球新報はどう見ているのか。

宮城修・琉球新報論説委員長と森田美奈子・沖縄タイムス論説委員長が、沖縄を巡る報道の現状や本土との温度差、またネットで広がるヘイトなどについて語った。

 

司会 早川由紀美 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

本土との距離 むしろ広がる

松本 克夫 (日本経済新聞出身)

 本土復帰後50年の間に沖縄の何が変わって何が変わらなかったのか。琉球新報の宮城修論説委員長は、玉城デニー沖縄県知事が新たに日米両政府に提出した建議書を引き合いに出した。建議書は、基地のない平和の島の実現、在沖米軍基地の整理・縮小、辺野古新基地建設の断念などを柱にしている。多くは、51年前に屋良朝苗琉球政府主席が提出した建議書以来、沖縄が繰り返し訴え続けてきたものだ。同じ要請の繰り返しは、「沖縄の未来を決める局面で、沖縄県民の意思はことごとく尊重されてこなかった」証左でもある。

 沖縄タイムスの森田美奈子論説委員長は、第一に変わったのは「女性のエンパワーメント」と指摘した。1995年の米兵による少女暴行事件では、「基地がもたらす人権侵害」ととらえていち早く立ち上がったのは女性たちである。「世代間の距離」も広がった。世論調査の「沖縄は何に力を入れるべきか」という問いに、高年層は1位に「基地」を挙げたのに対し、若年層の回答では「基地」は5位以内にも入っていない。一方、変わらないのは「女性の貧困・子どもの貧困」だという。沖縄は母子世帯や非正規労働者の割合が全国一高く、子どもの貧困率25%は全国平均の2倍。米軍統治下の法制度の不備に加え、「沖縄振興計画は女性や子どもの視点が乏しかった」からだ。

 両氏の感触では、沖縄と本土との心理的距離はむしろ広がっている。森田氏は、2013年のオスプレイ配備に対する抗議行動以降、ネット空間で「沖縄ヘイト」があふれ、「政府に盾突くのは許さないという空気を感じる」という。宮城氏も、「沖縄の現実を知らない人が多い。27年間の米軍統治の歴史が全く共有されていない。事実誤認に基づく発言がネット空間を占めている」とこぼす。誤解解消に向けて、森田氏は沖縄の思いを深く内在的に理解したうえでの報道を本土のメディアに求めた。


ゲスト / Guest

  • 宮城修

    琉球新報社論説委員長

  • 森田美奈子

    沖縄タイムス社論説委員長

研究テーマ:沖縄復帰50年

研究会回数:6

前へ 2025年05月 次へ
27
28
29
30
1
2
3
4
5
6
7
10
11
12
17
18
24
25
27
28
31
ページのTOPへ