会見リポート
2022年02月03日
14:00 〜 15:30
10階ホール
「ソ連崩壊30年」(3) ウクライナ危機を考える 畔蒜泰助・笹川平和財団主任研究員
会見メモ
ロシアがウクライナ周辺での軍備を増強し緊張が高まるなか、畔蒜泰助・笹川平和財団主任研究員がロシアと米国の意図や、今後の展開について分析した。
司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)
会見リポート
ロシア、武力抜きで欧州秩序再編狙いか
大前 仁 (毎日新聞社外信部副部長)
ロシアが隣国ウクライナとの国境付近に大規模な軍を集結させた結果、緊張状態が続いている。なぜプーチン政権は強硬姿勢を誇示するのだろうか。その鍵を見いだすためには、冷戦終結後の国際情勢を見返す必要があるのだろう。
1991年のソ連崩壊後、社会主義陣営に属していた国やソ連を構成していた国が北大西洋条約機構(NATO)に加わり、ロシアを包囲した。当時は「二流国」の扱いを受けたロシアだが、21世紀に入るころから、国際的な原油価格の高騰にも助けられ、国力を回復させていった。
そして今のロシアが軍事圧力を強めているのは「ウクライナに攻めるとか、攻めないということよりも、もっと大きな出来事になり得る」。畔蒜氏はこう指摘する。つまり、これまで甘んじてきた欧州の安保体制について、ロシアが軍事力を示威して、その秩序を替える「転換点」にしようとしている、と見立てているのだ。
なぜ、このタイミングでプーチン大統領は米国に挑んだのか? 畔蒜氏は「プーチン氏はバイデン大統領が交渉できる相手だとみなした」からこそ、圧力を用いて、米国を振り向かせたと読み取る。前任のトランプ前大統領はロシアとの関係改善に関心を寄せていたが、ロシアの選挙介入疑惑が足かせになり、対話を進められなかったこともある。
それでは、ロシアはウクライナに侵攻しないのだろうか? 現時点で畔蒜氏は「可能性は低い」と予測する。すでに軍事的な緊張を作り出す手法を用いて、ロシアは米国を対話に引きずり出すことに成功した。
それなのにウクライナに攻め込んで対話のチャンネルをむざむざと壊してしまうのは「愚策である」という。むしろロシアは欧州の安全保障の秩序を替えるようなプロセスを「戦争なしで実現したいのではないだろうか」。プーチン氏の野望を、畔蒜氏はこう読み解く。
ゲスト / Guest
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畔蒜泰助 / ABIRU Taisuke
笹川平和財団主任研究員 / Senior Research Fellow, The Sasakawa Peace Foundation
研究テーマ:ソ連崩壊30年
研究会回数:3