会見リポート
2022年01月28日
13:00 〜 14:30
10階ホール
「相続登記義務化を考える」里村美喜夫・日本司法書士会連合会副会長
会見メモ
社会問題化している「所有者不明土地」問題に対処するため、相続登記を義務付けるなどした関連法の改正案が、昨年の通常国会に提出され、可決・成立した。2024年4月までに施行される。
登記の専門家である日本司法書士会連合会の里村美喜夫副会長が制度改正が必要となった背景や今回の改正法の概要、課題について話した。
司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信)
会見リポート
所有者不明は九州の面積に匹敵/責務明確化で大転換
渡辺 精一 (毎日新聞社経済部)
民法改正で、相続で受け継いだ不動産の登記申請が義務化される。所有者不明土地の面積は九州に匹敵するとされ、周辺環境を悪化させたり、公共事業を妨げたりするなど社会問題になっている。その解消が狙いだ。
なぜ、相続登記は進まないか。里村副会長からは実務に基づく分析があった。権利登記は従来、法的義務はなく、その土地に住み、固定資産税を払っていれば「登記は必要ない」と考える人は少なくない。日本では家督相続の考え方も根強く、実態として長男が財産を継げば、相続手続きをしないケースもあるという。
だが、登記を先延ばしすれば、相続人は増え、土地に関する意思決定が困難になり、関係者にとっても大きな負担となる。司法書士会の調査では100人以上相続人がいる土地のケースも報告されている。
相続で名義人から不動産を取得したことを知ってから3年以内の申請を義務化し、しなければ10万円以下の過料を科す。2024年4月施行だが、名義人が亡くなってから相当たっていても義務対象となる。
法務局は住民基本台帳ネットワークシステムなどで名義人の死亡などを把握して、申請を求めることができるようになる。相続は身近なものであり、実際の運用のあり方は気になるところだ。これについて里村副会長は「ソフトに促す流れだろう」とみる。公共事業など優先度の高いものの登記を進めるイメージだ。
国の土地政策は所有者の責務を明確化する方向に大転換している。だが、「負動産」と呼ばれるように、土地を持て余し所有を放棄したい人は少なくなく、バランスも重要だ。今回は、土地を国庫帰属させる制度も創設されたが、帰属が認められるのはかなりハードルが高そうだ。里村副会長は、空き地の一体活用を進める「ランドバンク」などの海外事例を挙げ「制度の使い勝手を高める努力が必要だ」と提言した。
ゲスト / Guest
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里村美喜夫 / Mikio Satomura
日本司法書士会連合会副会長 / Vice President, Japan Federation of Shiho-Shoshi Lawyer's Associations
研究テーマ:相続登記義務化を考える