2021年12月15日 14:00 〜 15:00 10階ホール
「ジェンダーと教育・研究」(3) 一般社団法人Waffle共同代表 斎藤明日美さん

会見メモ

一般社団法人Waffleは日本のSTEM分野(理系分野)におけるジェンダーギャップを埋めることを目的に2019年に設立された。女子中高生を対象にプログラミング教育を展開している。

共同代表の斎藤明日美さんが、女子中高生にアプローチすることの意義、世界と日本の違い、格差を放置した場合に社会に与える影響などについて話した。

 

司会 早川由紀美 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)

 

一般社団法人Waffle


会見リポート

ジェンダー平等なSTEM教育目指して

稲澤 裕子 (読売新聞出身)

 日本の工学部における女子学生比率は14%と少ない。OECDで最下位、ユネスコが調べた117カ国で109位。15歳対象の学習到達度調査PISAで日本女子は77カ国中数学7位、科学6位とトップクラスの成績を収めているにも関わらず、ICTへ興味を持つ女子は3.4%と最も少ないという。

 「テック領域のジェンダーギャップは中高生の頃から始まる」。データサイエンティスト斎藤明日美さんは、データの裏付けを示しつつ説明を進めた。ジェンダー平等なSTEM(科学・技術・工学・数学)教育を目指して2019年、一般社団法人Waffleを設立、女子中高生向けIT教育プログラムの開発実践に取り組んでいる。

 保護者は女子に理系進路を期待せず、理数系教員は男性中心、実験で女子は補助に回る――進路選択の度にSTEMから女性がこぼれてしまう。活動では、米国NPO主催の女子中高生向け国際アプリコンテストにプログラミング初心者を鍛えて送り込む。パラアスリートへの寄付、日本への移住サポートなど多彩なアプリが誕生し、理工系志望者はゼロから12%に増えた。来年度からIT産業へ人材を送り出すために、文系女子大学生向け事業を強化する。

 米国では学部名称の見直しや初心者向け授業などで理系に女子を増やしてきた。日本では奈良女子大学が来年度女子大初の工学部を設置、名古屋大学が女子枠を設けるなどの動きがある。しかし、「学校基本調査の工学部の学科分類に情報科学が欠落しているなど、データ不足を補うところから始める必要がある」と指摘。政策提言にも力を入れる。

 科学技術の発展から「女性の存在」が抜け落ちてきた。命に直結する自動車の衝突実験から妊婦がもれ、顔認証で女性の精度が低い。このままでは今後、AIがジェンダーバイアスを再生産しかねない。「多彩な人がIT分野に入って、ITがカラフルに幅広くツールとして使われる社会になってほしい」


ゲスト / Guest

  • 斎藤明日美 / Asumi Saito

    一般社団法人 Waffle共同代表 / Co-founder of Waffle.org

研究テーマ:ジェンダーと教育・研究

研究会回数:3

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