会見リポート
2021年11月24日
16:30 〜 18:00
10階ホール
「新型コロナウイルス」(78) 観光再生への道 上西伴浩・帝国データバンク情報統括部長
会見メモ
帝国データバンクの上西伴浩情報統括部長が、コロナ禍でいたんだ観光業界の現状や課題を調査結果をもとに解説するとともに、観光業再生に受けた課題についても話した。
司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信)
会見リポート
コロナ禍で進む二極化/デジタル化推進など課題が
堀 義男 (時事通信出身)
新型コロナウイルス禍は旅館・ホテルや旅行会社などの観光業界を直撃した。帝国データバンクの上西伴浩氏は「観光関連業種の業況感は厳しさが続いている」と分析する。
ただ、今年9月時点では前年同月比で増収となった旅館・ホテルが2割強、旅行会社でも1割強など「いいところと悪いところがはっきりしている」とも指摘。同じ業界・業種でもコロナ禍によって進む二極化現象が、観光業界にも及んでいると解説した。
一例として、工場間の従業員の移動ビジネスを始めた観光バス事業者を挙げ、コロナ危機の下で新たなサービスの提供によって顧客開拓に取り組む動きがあると紹介した。その上で、「Go Toトラベル」再開や新型コロナ後のインバウンド回復を漫然と待っているだけでは、生き残りは難しいと警鐘を鳴らした。
観光業界で期待の高い「Go To」の早期再開についても、従業員の手当てや仕入れ関連の資金が必要になると強調。「ゼロゼロ融資」といった支援策で息をつく事業者にとって、両刃の剣になりかねないとみる。
さらに、事業者の間からは足元の燃料コスト上昇に関し「価格転嫁は難しい。よほどの増収でない限り顧客が増えるほど経営を圧迫する」との懸念も示されていると説明した。
観光の代表業種である旅館・ホテルにとっての「コロナ前後で明らかになった課題」として、顧客ターゲット明確化に向けたビジネスモデルの再定義、収益構造を見極めたサービス・価格の見直し、コロナ禍の下で削減した従業員の確保、設備・サービスともに対応の遅れが目立つデジタル化推進を挙げた。
上西氏は観光再生の切り札とされるインバウンドの回復は早くても2023年以降とみる。その間にコロナ禍が浮き彫りにした課題に本気モードで取り組み、解決できるか。残された時間はそう長くはない。
ゲスト / Guest
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上西伴浩 / Tomohiro Kaminishi
帝国データバンク情報統括部長
研究テーマ:新型コロナウイルス
研究会回数:78