2021年12月08日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「ジェンダーと教育・研究」(2) 林香里・東京大学理事、副学長

会見メモ

林香里さんは今年4月に東京大学の理事・副学長に就任、グローバル・ダイバーシティ担当として改革を進めている。

「ジェンダーと教育・研究」の第2回ゲストとして、林香里・東京大学理事、副学長が登壇し、日本においてジェンダー平等が進まない背景や、東京大学の取り組み、メディアに求められる役割などについて話した。

 

司会 辻本浩子 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

「逆差別」がまとう誤認識

柚木 まり (東京新聞政治部)

 「日本人、関東出身、私立男子校卒」。4月、東京大学理事・副学長に就任し、学内のダイバーシティー実現に取り組む林香里さんが分析する「東大生」の構図だ。女性の学生数は2割(教授は1割)にとどまり、同質性の高い集団で「東大の学生は多様性が低い」と断じた。その上で「東大だけではなく、現在の日本の傾向と合致しているのではないか」と問題提起した。

 欧米でも傾向は同様だが、日本は多様性への認識が薄く、制度的な努力が手薄だという。「日本こそどの国よりも女性を支援しなければ、学問上のフェアな競争さえできない」。家事や育児の大部分を女性が担っている現状がありながら、女性に対する支援措置には「逆差別」という言葉が今も飛び交う。「逆差別という言葉には、出発点が無色透明、中立公正という誤った認識がある」と、いびつな社会構造にこそ目を向けるべきだと指摘した。

 東大では、女性教員を採用した研究室に人件費を助成したり、午後9時まで子どもを預けられる保育園を学内に設置。出産、育児や介護に必要な費用を補助する両立支援には、男性からの申請が女性を上回り、理解の浸透に手応えも感じている。東大憲章にLGBTQなど性的少数者への配慮を盛り込むことも検討中だ。

 教員の採用などで、一定数を女性に割り当てるクオータ制の導入については、重要性は認識しながらも慎重な立場を取る。「多様性が学問のレベルを上げ、個人の職業の自由を保障する、という同じテーブルに着ける状況にまだない。現状認識を共有することから始めたい」と語った。

 メディアが社会の不平等さに目を向けるべきだと指摘した。日本のジェンダー差別は深刻で、コロナ禍は女性を取り巻く環境をより厳しくした。政治も経済も、社会全体を通じてジェンダーの視点が必要だ。「長い期間をかけて認識を集め、合意を取り、伸ばしていかなければならない」。林さんの言葉をかみしめている。


ゲスト / Guest

  • 林香里 / Kaori Hayashi

    東京大学理事・副学長 / Executive Vice President, the university of tokyo,

研究テーマ:ジェンダーと教育・研究

研究会回数:2

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