2021年10月28日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「サイバー社会」(4) 李智慧・野村総合研究所上級コンサルタント

会見メモ

李智慧・ 野村総合研究所上級コンサルタントが中国のデジタル戦略や中国でデジタル社会の実装が迅速に進んだ背景などについて話した。

李さんは中国福建省出身で「チャイナ・イノベーション2 中国のデジタル強国戦略」(日経BP社、2021年3月)「チャイナ・イノベーション データを制する者は世界を制する」(日経BP社、2018年10月)の著書がある。

  

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

中国式デジタル統治/官民一体でコロナ対策に効力

伊集院 敦 (日本経済研究センター首席研究員)

 習近平国家主席の強国路線の下で進むデジタル化は、中国の経済社会をどう変化させるのか。李智慧氏がデジタル技術を活用した中国の新型コロナウイルス対策を事例に解説した。

 世界で最初に感染が広がった中国が挙国体制で他国に先んじてウイルス拡散の勢いを抑え込んだことは知られるが、そこで重要な役割を果たしたのがデジタル技術だ。PCR検査やワクチン接種などのデータを連携した全国統一の健康コードを約1カ月で実現した。経済面でも、地方政府が決済アプリなど通じて配布したデジタル消費券が消費回復をけん引し、デジタルが中国の経済成長の新たなエンジンになったという。

 コロナ危機に際し、中国で迅速な社会実装ができた背景として李氏が挙げたのが、政権が計画的に進めてきたネットワークなどのデジタル基盤整備と、テック企業の目覚ましい活躍だ。「政府の強いリーダーシップの下、民間と共同で実践したデジタル・ガバナンス」が健康コードなどを短時間で実現させたという。中小企業のデジタル化もメガテック企業が提供した各種ツールに助けられ、大きく進展したと指摘。官民一体のガバナンス効果が「社会の安全に寄与した」との評価を示した。

 もっとも、強力な挙国体制と官民一体の迅速な取り組みは中国の独特な政治体制があってのことだろう。中国との向き合い方をめぐり、李氏は「中国を正しく理解する」「豊富なデジタル社会実装事例から学ぶオープンな姿勢も必要」と提言したが、質疑では習主席が掲げる「共同富裕」とテック企業規制の関係や、経済安保をめぐる米中の動向などにも話が及んだ。多くの欧米企業が中国を巨大市場や実装の場として活用し続けているのは事実だが、中国の強国路線が抱えるリスクもある。来年秋に5年に1度の共産党大会を迎える中国の内政と対外関係からも目が離せない。


ゲスト / Guest

  • 李智慧

    野村総合研究所上級コンサルタント

研究テーマ:サイバー社会

研究会回数:4

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