会見リポート
2018年01月15日
17:30 〜 20:00
10階ホール
試写会「花咲くころ」岩波ホール創立50周年記念上映作品第1弾
会見メモ
会見リポート
閉塞した時代に抗う少女たち
明珍 美紀 (毎日新聞社会部)
街の生気は失われていた。物資が不足し、店の棚には売る物がない。配給の長い列に並ぶ人々の目の前で民兵がパンを奪っていく。舞台は1992年春、ジョージア(グルジア)だ。前年の独立宣言の後に旧ソ連は解体したが、内戦や民族紛争が発生。戦火の不安が漂うなかで、首都トビリシに住む2人の少女がひたむきに生き、閉塞した時代に抵抗する。
「岩波ホール」創立50周年記念作品第1弾のこの作品は、ジョージアのナナ・エクフティミシュヴィリ監督(39)が、自身の体験をもとに構想を練り、夫でドイツ出身のジモン・グロス氏(41)と共同で監督した。
当時、ナナさんはヒロインの少女たちと同じ14歳。「92年の冬は暖房も給湯もなく、暴力は日常茶飯事だった」という。映画にも、少女の一人が連れ去られ、強引に結婚させられるシーンがある。「戦争が続くと、自分たちには力が必要だ、男は女を守らなくてはならないと過剰に考える」「ジョージアの女性から奪われてきた声を取り返したい。民主化のプロセスを進めなければならない」――。ナナさんは自身の心情や決意をインタビューなどで語っている。
上映前に会見した同ホールの支配人、岩波律子さん(67)は「監督の心からの思いを表現した映画を上映するという信念で続けてきた」と振り返る。「いまはスマホやタブレットなど手のひらで映画を見る時代。若い人に映画館という暗い空間で息をこらしてスクリーンを見つめることが人生の新しい体験であることをお伝えしたい」。総支配人を務めた故高野悦子さんの思い出にも触れた。
年末までの上映作品は「マルクス・エンゲルス」、「ゲッベルスと私」といった欧州映画のほかキルギスやインドなどの傑作をそろえる。企画広報担当の原田健秀さん(63)は「分断や格差、対立という流れに抗い、社会を変える。そうした映画の持つ力を示したい」と話した。
ゲスト / Guest
-
「花咲くころ」 / In Bloom