会見リポート
2017年01月17日
14:00 〜 15:30
10階ホール
「2017年経済見通し」(2)渡辺博史 国際通貨研究所理事長
会見メモ
財務省出身の国際エコノミスト。昨年同様、FTなどの風刺画を使い、波乱含みの世界を俯瞰した。「トランプはPiece(断片)Maker。WTOなど既存組織を粉々にするかも」「中国の政策対応能力が低下している」「今年は何があっても驚かず虚心坦懐で対応してほしい」
司会 水野裕司 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)
会見リポート
不安尽きない世界経済
アメリカのトランプ新政権が実際にどのような政策を行うのか、この点が今年の経済を見通す上での最大の焦点であることに、おおかた異論はないだろう。「意外にマトモ」なのか、それとも「やっぱりヘン」なのか。何かヒントを探りたいという雰囲気が会見場にあふれる中、トップバッターの矢嶋氏(1・13)は、「昨年、Brexitもトランプ当選も外した」ので「自分の常識で考えて予測していいのかわからない」と率直に告白、会見も異例のスタートとなった。
矢嶋氏は、新政権が少なくとも「国内をふかす」政策を採る以上、経済は「短期的には上向く」とみる。もっとも中長期的には悲観的にならざるを得ないと指摘、完全雇用で賃金が上がっている現状を踏まえると、さらに「ふかす」と、高金利とドル高を招くと指摘し、世界貿易の縮小や中央銀行FRBと新政権の対立にも懸念を示す。
3年連続でご登場願った渡辺氏(1・17)も「今年はヨーロッパではなくアメリカから話を始めます」としつつも、「予見可能性のない人に対して政策を見通すことなんてできません!」と思わず本音。インフラ投資や減税の規模などは一般教書演説までには見えてくるが、金融規制緩和の具体化は遅れるとの見通しを示した。
さらに国際政治の構造について渡辺氏は、「新政権の親ロシア政策で欧州の警戒感が募る」とし、米ロに日本を加えた新たな3国の友好関係と、それに対する欧州と中国の接近という「戦後見たこともない変化が起き得る」と洞察する。
渡辺氏恒例の、今年の干支の英語(Chicken)にちなんだ予測は、C:中国不透明、H:緊張高まる中東、I:不平等、C:引き続きの低金利と低インフレ、K:コリア(複数)が危険に、E:欧州分裂…それでも、N:ノー・グローバル・リーダーシップ!
矢嶋氏によれば、1987年はブラックマンデー、97年はアジア危機、07年はリーマンショックの引き金になったサブプライムバブル崩壊と、7の年は危機の年とか。果たして2017年はどんな時限爆弾があるのか、そして、それを踏むのは誰なのか。不安な話題の尽きない幕開けとなった。
企画委員 TBSテレビ編集主幹 播摩 卓士
※この会見リポートは矢嶋康次・ニッセイ基礎研究所経済研究部チーフエコノミスト会見(1.13)との統合版です。
ゲスト / Guest
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渡辺博史 / Hiroshi Watanabe
国際通貨研究所理事長 / President, The Institute for International Monetary Affairs (IIMA)
研究テーマ:2017年経済見通し
研究会回数:2