2023年10月16日 13:30 〜 14:30 10階ホール
ワリード・シアム駐日パレスチナ大使 会見

会見メモ

パレスチナ自治区のガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルの軍事衝突を受け、ワリード・シアム駐日パレスチナ大使が会見した。

大使は無辜の民間人の命が奪われているとし、イスラエルが行っていることは「ジェノサイド」と批判。今回の軍事衝突については「歴史の脈絡で考えるべき。大きなレンズで歴史をしっかり見てほしい」と訴えた。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 池田薫 サイマル・インターナショナル


会見リポート

「75年間の占領こそ根源」

川北 省吾 (共同通信社編集委員)

 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスのイスラエル攻撃。多くの市民を殺害し、人質に取った10月7日の非道行為は、ネタニヤフ政権の報復攻撃を招き、新たな戦火を中東にもたらした。

 緊張のさなかに行われた駐日パレスチナ常駐総代表部のワリード・シアム代表(大使)の記者会見は、根深い対立の根源でありながら、置き去りにされてきたパレスチナ問題に改めて光を当てる機会となった。

 質疑を交え、2時間近くに及んだ長時間の会見で、繰り返し口をついて出たのは「歴史は(ハマスがイスラエルへの攻撃を仕掛けた)まさにその日に始まったわけではない」という言葉だ。

 シアムさんは問う。「メディアにはハマス非難が渦巻くが、(イスラエル建国からの)75年間、土地を占領され、弾圧で命を落とし、家を追われたパレスチナ人のことはみんな忘れてしまったのか」と。

 今回、「戦争状態」(ネタニヤフ首相)の引き金を引いたのはハマスだ。過去の歴史を口実にしようと、市民への暴力は正当化できない。その論理を認めれば、ロシアのウクライナ侵略も許されてしまう。

 それでもシアムさんの言葉は重い。塀で囲まれ、約220万人がひしめくガザは「天井のない監獄」と呼ばれる。同じくパレスチナ自治区のヨルダン川西岸では、ユダヤ人入植地が拡大の一途をたどる。

 ハマスはその不満を背景に台頭した。ユダヤ人社会の右傾化と相まってイスラエルと衝突を繰り返し、「占領」は既成事実化。30年前に結ばれ、イスラエルとパレスチナの共存を目指した和平合意は破綻した。

 イスラエルは米国のお墨付きを得て、ガザで地上作戦を拡大する。ハマスに報復するため「220万人全員を罰するなど許されない」とシアムさんは訴える。その言葉は、人道危機を止められない国際社会への告発でもある。


ゲスト / Guest

  • ワリード・シアム / Waleed SIAM

    駐日パレスチナ大使 / Ambassador, Representative of the Permanent General Mission of Palestine

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