2023年05月26日 15:30 〜 17:00 9階会見場
民間月面探査プログラム「HAKUTO-R」 ミッション1 成果報告会見

会見メモ

ispaceの袴田武史CEO、氏家亮CTO、野﨑順平CFOが会見し、民間による世界初の月面着陸を目指した月面探査プログラム「HAKUTO-R」 ミッション1の成果報告を行った。

月面への着陸を目前に何が起きたのか、どのようなデータを得られたのかといった今回の挑戦の分析や、今後の展望について話した。

 

司会 元村有希子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

 

写真左から氏家CTO、袴田CEO、野﨑CFO


会見リポート

着陸失敗は高度の誤認識

行方 史郎 (朝日新聞社論説委員)

 月面着陸の直前に何が起きたのか。データの分析から判明した詳細を氏家亮CTOが語った。

 4月26日未明、着陸機は月の上空100㌔から着陸地点となるクレーター内部に向けて順調に降下を開始した。ところが上空10㌔を切り、クレーターの縁を通過して以降、機体が高度を正しく認識しなくなったという。クレーターの縁が高低差約3㌔もある崖のようになっており、レーザーを使った測定高度が急激に変化(上昇)したため、機体側は異常が発生したと判断。着陸地点を事前に変更したこともあり、月面の環境を十分シミュレートできていなかったことを一因として挙げた。

 最終的には高度5㌔の時点でゼロ(着陸)と誤って認識し、燃料を使い切った約1分後、時速360㌔以上で月面に落下したと推測される。氏家さんは「実際には崖による高度の変化を正しく測定していたと考えられる」として、高度を認識するソフトウエアや事前のシミュレーションなどに改善の余地があるとの考えを示した。ただ、1から10まで設定したミッションの8までは成功して豊富なデータが得られた。「次は月面着陸できるという自信を深められ、チームとして仕上がってきたことが一番の成果だ」と語った。

 袴田武史CEOからは、業績への影響について報告があった。約1億円の売り上げ減少が見込まれるものの、業績見通しに変わりはなく、2024年と25年に予定される2回目、3回目の打ち上げスケジュールにも変更はないとした。袴田さんは「期待に十分応えられなかったことは残念だが、失敗の原因が明確となり、次につなげていくことが何より重要」と話した。

 いずれもこの日明らかにされる新事実ばかり。質問が途切れることはなく、会見終了後も登壇者らを取り囲んで取材が続いた。


ゲスト / Guest

  • 袴田武史 / Takeshi HAKAMADA

    日本 / Japan

    ispace代表取締役CEO&Founder / Founder&CEO, ispace, inc.

  • 氏家亮 / Ryo UJIIE

    日本 / Japan

    ispace CTO / Chief Technical Officer, ispace, inc.

  • 野﨑順平 / Jumpei NOZAKI

    日本 / Japan

    ispace取締役CFO / Director&CFO, ispace

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