2023年06月06日 13:00 〜 14:30 9階会見場
「多様性社会への課題」(5) LGBTにとって働きやすい企業とは 柳沢正和・ゴールドマン・サックス証券プライム・サービス部長

会見メモ

LGBTを積極的に支援、採用するする「アライ」企業の一つであるゴールドマン・サックス証券の柳沢正和さんが、企業がLGBTを支援する意味、LGBTにとって働きやすい環境について話した。

 

司会 伊藤雅之 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

LGBT包摂は死活問題

山田 道子 (毎日新聞出身)

 柳沢氏は2008年にゲイを自覚。会社でカミングアウトした。当時の会社で初めて管理職となり、自分らしさを明確にしないと勤めを果たすのが難しいと気づいた。

 LGBTの人は十分なサポートがない場合、「穴に落ちたような恐怖感」を抱くことがあるという。例えば、イスラム教国への転勤を命じられた場合……。日本人と外国人が海外で同性婚をしても、日本では外国人配偶者にビザが出ない。結果、会社を辞めざるを得ないことがある。 

 「非常にもったいない。企業にとって死活問題ではないか」と柳沢氏は強調。「人材確保」「企業の社会的責任」「国際競争力強化」の観点から、日本企業にLGBTへの対応を見える形で取り組むことを求めた。「法律がなくても企業にできることはある」と。

 ゴールドマン・サックスでは19年、従業員がピンクの服を着てLGBT支援を見える化する「ピンク・フライデー」を開始。アジアでも100社以上に広がっているそうだ。

 CEOは同性婚支持を表明するなどLGBTの人権に取り組む姿勢を明確にした。これは、人事や研修など社内制度の改革に結び付く。様々なガイドラインを作成。LGBTの人の登録の機会を設け、情報提供や福利厚生に役立てる。「He、She、They」、自分をどう呼んでほしいか選べるようにした。LGBTの学生向けのイベントも開催。

 「人権意識が今以上、企業に求められている時はない。人権に取り組めば結果的に競争力に結び付くと考えるべきだ」と説いた。

 翻って日本。差別禁止に踏み込まないLGBT理解増進法。「100歩手前」と厳しく評しつつも、「ないよりまし。少しずつ動いていくのがマイノリティーの歴史」と、同性婚など婚姻の自由実現に期待を寄せた。時代の変化に、「動かしたい」との強い意志を感じた会見だった。


ゲスト / Guest

  • 柳沢正和 / YANAGISAWA Masakazu

    日本 / Japan

    ゴールドマン・サックス証券プライム・サービス部長 / Managing Director, Prime Services, Goldman Sachs Japan Co., Ltd.

研究テーマ:多様性社会への課題

研究会回数:5

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