2023年04月18日 16:00 〜 17:30 オンライン開催
「多様性社会への課題」(1)LGBTQの法的課題 三成美保・追手門学院大学教授

会見メモ

ジェンダー法学、ジェンダー史が専門の三成美保・追手門学院大学教授が、LGBTQの人権状況について、歴史的背景・国際的な趨勢などをまじえ解説した。

 

司会 早川由紀美 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

多様な個人 尊厳認める流れ

早川 由紀美 (シリーズ担当企画委員 東京新聞編集委員)

 今年2月、首相秘書官の「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」という性的少数者(LGBTQ+)に対する差別発言が報じられた。岸田文雄首相は謝罪し、秘書官は更迭されたが、日本の取り組みの遅れがあらためて露呈した。

 差別発言をきっかけに、棚上げとなっていた「LGBT理解増進法案」の検討も進められたが、SNSを中心に当時者に対するヘイトやデマも広がった。多様性のある社会はどうすれば実現できるのか。シリーズは、そのような問題意識を出発点に始まった。

 初回は追手門学院大学の三成美保教授(ジェンダー法学、ジェンダー史、法制史)に性的少数者の人権の現状や、法案が果たす役割についてひもといてもらった。  

 三成さんが委員長を務める日本学術会議法学委員会LGBTI権利保障分科会は、包括的差別禁止法を目指した個別分野における法改正や、性同一性障害者特例法を改廃し新法(性別記載変更法)を制定することなどを提言している。

 三成さんが指摘したのは、LGBTQの人権保障は21世紀の国際的な課題であるということだ。世界の人権保障の流れは、家父長制克服、女性差別の撤廃(1970年代)、ジェンダー平等(90年代)の歩みを経て、2001年には世界初の同性婚が認められるなど、より多様な個人の尊厳を認める方向へと進んでいる。日本では地方自治体での同性パートナーシップ制度の広がりは見られるものの、伝統的家族観に固執する国の動きは鈍い。男女格差を測るジェンダー・ギャップ指数も国際的に極めて低い順位にとどまり続ける。

 21世紀に入り、欧州などでLGBTQの人々の権利保障が進んだ背景として、三成さんは選挙の争点になってきたことを挙げた。「日本では人権が争点として重要視されない」とも。選挙報道のあり方についても考えさせられた。


ゲスト / Guest

  • 三成美保 / MITSUNARI Miho

    日本 / Japan

    追手門学院大学教授 / professor, Otemon Gakuin University

研究テーマ:多様性社会への課題

研究会回数:1

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