2023年01月13日 13:00 〜 14:00 10階ホール
「2023年経済見通し」(2) 阿波俊弘SUMCO社長

会見メモ

シリコンウェハーで世界3割のシェアを持つSUMCOの阿波俊弘SUMCO社長が、半導体産業の動向と展望について、サプライチェーンの視点も交えながら話した。

 

司会 中山淳史 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

半導体、米中対立で波乱も

大辺 暢 (日本経済新聞社編集委員)

 今年の経済見通しを語る上で、大きな不透明要因となるのが米中対立だ。米政府は昨年10月7日に半導体の対中輸出規制を強化し、「半導体戦争」が語られ始めた。半導体がなければ、中国は最先端の電子機器を生産することができない。世界経済の成長にも影響を与える。半導体シリコンウエハー世界大手SUMCOの阿波社長は、「今はまだそれほど影響は出ていない」としつつ、今後の動向を警戒する。

 経済のハイテク化の流れの中で、半導体の出荷額は過去40年間で45倍に成長。今後も成長が続くと見込まれるが、4年に1度ぐらいのサイクルで好不況を繰り返しており、今年はマイナス成長が予想されている。

 SUMCOは、信越化学工業と併せて世界のウエハー生産の約6割を担う。市場の成長鈍化は、日本の産業界にも影を落とす。

 市場の行方を占う上でカギとなるのが中国だ。スマホ出荷で世界の4分の1を占め、5Gの普及率でも先行し、「半導体消費国として中国は非常に大きい」(阿波氏)という。「ゼロコロナ政策」解除で中国経済が活気を取り戻し、需要を押し上げるとの期待もある。ただ阿波氏は、ここにきて不透明要因も出てきたと懸念する。日本に対して新規ビザの発給見送りを決め、日本の製造装置メーカーがアフターケアを提供できなくなったり、各国の水際対策の強化で中国人の海外旅行、ひいてはスマホ需要そのものが低迷する可能性もあるという。

 さらに懸念しているのは、米国の対中輸出規制の一段の強化だ。韓国のサムスンや台湾のTSMCの中国工場に対しては規制適用の1年猶予を認めたが、今後の動向次第では「マイナス要因が増える」と心配する。

 日本は半導体需要のけん引役になれるのか。阿波氏は、自動運転、EV、ロボットの活用が「間違いなく伸びていく」と予想。これらは日本の得意分野でもあり、「確実に伸ばしていけば良い」と産業界にエールを送った。


ゲスト / Guest

  • 阿波俊弘 / AWA Toshihiro

    日本 / Japan

    SUMCO社長 / President, Sumco Corp

研究テーマ:2023年経済見通し

研究会回数:2

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