会見リポート
2022年08月12日
14:00 〜 15:00
10階ホール
俳優 仲代達矢さん 会見
会見メモ
役者人生70周年を迎えた仲代達矢さんが、記念公演として主演舞台「いのちぼうにふろう物語」が9月4日から石川・能登演劇堂で上演されるのを前に登壇した。
俳優としての70年を振り返るとともに、舞台に込めた思いを話した。
会見日は、77回目となる終戦記念日の3日前。自身の戦争体験を語るとともに、「人間とはいとおしいもの。私は『絶対戦争反対』と言いながら死んでいきます」と平和への強い思いを明かした。
「平和」と揮毫した。
司会 中村正子 日本記者クラブ(時事通信)
会見リポート
「人間は愛おしみ合える」
濱田 元子 (毎日新聞社論説委員兼学芸部編集委員)
俳優の仲代達矢さんは今年、役者人生70周年の節目を迎え、12月には90歳になる。9月4日から能登演劇堂限定で始まる無名塾公演「いのちぼうにふろう物語」を前に会見。「よく戦った人生だと思う」と振り返り、「若い俳優たちの10倍の努力をしないと、現役の俳優としてやっていけない。それが生きる目的の一つとなっている」と舞台への変わらぬ熱意を見せた。
1952年に俳優座養成所に入り、舞台と映画の二つの世界で活躍してきた。75年には妻の宮崎恭子(ペンネーム・隆巴)さんと無名塾を創設し、後進の育成に努めてきた。
映画会社からの専属の誘いを断ったのは「そのころ外国映画の役者の基礎は必ずといっていいほど舞台にあったし、私もそうありたかった」と明かし、小林正樹、黒澤明、成瀬巳喜男ら錚々たる監督の名前を挙げ、「一緒に作品を作れたことが、私の役者人生の宝物です」と語った。
一方で古巣・俳優座の師匠である千田是也に触れ、「せりふ術、ダイナミックな舞台上での動きはいまでもはっきり脳裏に焼き付いています」と感謝の念を表した。
今回が3演目となる「いのちぼうにふろう物語」は、山本周五郎の小説『深川安楽亭』を舞台化したもの。97年の初演は、劇作を手がけた隆巴さんの追悼公演となった思い入れの深い作品だ。「これまでずいぶん多くの悪い人間を演じてきたが、どんなに悪いやつでも人間として真っ当さがある。今だからではなく、普遍的なテーマとして、人間は愛おしみ合えるものだと訴え続けたい」
13歳で終戦。戦争体験を語り継ぐ。「人間に欲望が有る限り、戦争は終わらない」。映画「乱」を撮った時の黒澤監督の言葉がいまだに脳裏に残っているという。「戦争で一番犠牲になるのは庶民。絶対戦争反対を言いながら死んでいきます」。ゲストブックに揮毫した「平和」という言葉が重い。
ゲスト / Guest
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仲代達矢 / Tatsuya NAKADAI
俳優