2020年02月14日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「朝鮮半島の今を知る」(41) 朴裕河・世宗大学教授

会見メモ

『帝国の慰安婦』『和解のために』などの著書がある朴教授が登壇し、歴史問題との向き合い方、今後の日韓関係について語った。

朴教授は『帝国の慰安婦』は元慰安婦らの名誉を傷つけたとして韓国で名誉毀損に問われ、一審では無罪判決、二審では有罪として罰金1000万ウォンの支払いを命じられ、現在は最高裁で係争中となっている。

 

司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

「失敗した30年」に終止符を

五味 洋治 (企画委員 東京新聞論説委員)

 「今の事態はここ30年間の結果であり、必然的な流れだと思います」

 戦後最悪とも言われる現在の日韓関係について、意外な言葉から会見は始まった。

 両国関係が安定していた1990年代、双方の認識にはズレが生じており、朴さんを含めさまざまな立場の人が、埋めようとしたものの、失敗したのだという。

 それでは、この30年に何が起き、何が変わったのか。

 朴さんはまず「冷戦の終結」を挙げた。その後、国際的に慰安婦問題をはじめとする女性や人権問題に関心が高まった。韓国では、日本への尊敬、学ぼうという機運が薄れ、批判本が売れるようになった。

 「韓国では民主化の影響で市民の力が飛躍的に強くなり、国と国との関係を政治家が管理できない時代になった」(朴さん)という指摘は、的を射ていると感じた。

 「日本側も努力はした」と朴さんは評価するが、植民地支配の問題にきちんと向き合えないままだった。

 そして歴史をめぐる溝は、法廷に持ち込まれた。「裁判は勝つか負けるかを目標とする空間なので、論理が単純化されてしまう」(朴さん)。この単純化にはメディアも加わり、対立を一気に燃え上がらせた。

 朴さん自身、慰安婦に関する著書をめぐり名誉棄損の訴訟を起こされている。この「管理の失敗」に巻き込まれた一人だろう。

 だからと言って、過度に感情的になったり、諦めるべきではないと朴さんは強調した。

 失敗した30年に終止符を打ち、未来を開くためとして、植民地支配への理解をいっそう深め、北朝鮮に残された日本人妻や朝鮮戦争に日本が事実上参加した問題などの記憶を掘り起こすよう呼びかけた。

 またメディアや教育の役割が大きいと述べ、「多様な考え方の接点を作ってほしい」と期待を込めた。

 穏やかだが確信に満ちた話しぶりに、救われるような気がしたのは私だけではあるまい。


ゲスト / Guest

  • 朴裕河 / Park Yuha

    韓国 / Korea

    世宗大学教授 / professor, Sejong University

研究テーマ:朝鮮半島の今を知る

研究会回数:41

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