国立天文台天体観望会


会見リポート

星は見えなくても

井上 能行 (東京新聞論説委員)

 ウイークデーの夕方、東京・三鷹の国立天文台で開かれた観望会に会員とその家族約70人が集まった。この種のイベントとしては非常に多い。火星、畏るべし。

 15年ぶりの大接近と話題になったのは7月31日だったが、そのころは日没のころに昇り始めるので、観察には不向き。火星が昇っていて月明かりのない日、ということで9月12日に設定された。

 火星は凶星といわれ、しばしば戦争や災害と結び付けられる。確かに、今年は自然災害が多い。観望会の日は、そのころとしては珍しく雨が降りそうな曇天だった。やはり星が悪いのか、と思ってしまう。

 案内されたのは、50㌢公開望遠鏡。ドームの屋根は閉ざされていたが、望遠鏡は火星の方向を向いていた。ドームの小さなゴミが見えればおもしろいと思ったら「遠くのものを見るのは得意だが、近くは焦点が合わない」という。

 曇天でも大丈夫なのが、4D2Uドームシアター。望遠鏡などで得られたデータを元に映像などを製作している。ここで三鷹から火星までの旅行を楽しんだ。

 最新の成果などについての講演と懇親会もあった。

 南米・チリにあるアルマ望遠鏡で惑星系誕生の様子をはっきりと捉えることに成功した、といった説明を聞いた。「誕生を捉えた画像を見て涙を流した高名な研究者が二人はいる」と聞き、重要性が分かった。

 一方で、研究環境は厳しい。「太陽観測衛星『ひので』はとっくに設計寿命を過ぎているが、後継機の計画がまだ正式に決まらない」と担当者から聞いた。

 お世話になった縣秀彦天文情報センター普及室長は「天文学は(日本だけでなく)世界中で愛されている」という。天文台は年末年始以外は公開。定例観望会が月2回開かれている。関心のある方はどうぞ。


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