2018年09月19日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「朝鮮半島の今を知る」(15) 朝鮮戦争と日本 大沼久夫・前橋国際大学教授

会見メモ

朝鮮戦争への日本の協力について、「掃海隊やLST(戦車揚陸艦)の派遣など、われわれが想像する以上の貢献があった。これは、20~25万人規模の戦力として換算できる」と語った。背景には、吉田内閣が講和条約を有利な条件で早期に締結したいとの思惑があったとした。

共愛学園前橋国際大学教員ページ

 

司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

考えたい、朝鮮戦争と日本

五味 洋治 (東京新聞論説委員)

 休戦状態のままの朝鮮戦争を終わらせようという動きが活発化している。終戦には、休戦協定を平和協定に切り替える必要があるが、その前に関係国がまず「終戦宣言」を出そうというものだ。

 北朝鮮と米国の非核化をめぐる交渉で浮上し、米国側も宣言に応じる姿勢だった。ここに来て米国側は「北朝鮮の非核化が先」として交渉は停滞している。

 朝鮮戦争を終わらせることが、北東アジアの安全保障体制に、大きな影響を与えることに気が付いたからだろう。

 それでは、この戦争で日本はどんな役割を果たしたのか。

 朝鮮戦争をはじめとする冷戦研究で知られる大沼久夫・共愛学園前橋国際大学教授は、日本人船員を中心に、「数万人」が朝鮮戦争に協力したと、資料を基に推測した。

 兵力や物資を戦場である朝鮮半島に送り届ける仕事だった。海上封鎖に使われた機雷の掃海に当たった日本人の中には、機雷の爆発による死者も出ている。

 朝鮮戦争への「参戦」は、当時の吉田茂内閣の全面的な協力の下で進められたが、このことは戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認をうたった新憲法の9条との絡みで、徹底的に秘密にされた。

 朝鮮戦争により兵力が朝鮮半島に渡ってしまい、日本国内の米軍基地は空っぽの丸腰状態になった。このため、米国が吉田内閣に対し、自衛隊の前身である警察予備隊を組織するよう求め、その後自衛力は増強されていった。

 このように、日本の戦後は、朝鮮戦争によって形作られた部分が多い。

 ちょうど、憲法の見直しが政治の焦点になっている。自衛隊を憲法に書き込むことだ。

 大沼教授は「日本は朝鮮半島の南北分断にも責任を持っているし、朝鮮戦争にも関与した。北東アジアに残る冷戦体制を集団安保体制といった形に変えていく上で、日本も役割を果たすべきではないか」と述べた。同感だ。

 朝鮮戦争は、単に日本に経済復興をもたらせただけではない。もう一度、考えたいと思った。


ゲスト / Guest

  • 大沼久夫 / Hisao Onuma

    日本 / Japan

    共愛学園前橋国際大学教授 / professor, Kyoai Gakuen University

研究テーマ:朝鮮半島の今を知る

研究会回数:15

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