2018年07月10日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「朝鮮半島の今を知る」(11) 宮本悟・聖学院大学教授

会見メモ

米朝会談後の展望を考えるうえで抑えるべきポイントを指摘した。

「北朝鮮の最重要課題は安全保障でありそのための和解。米朝会談のポイントは<北朝鮮が核を放棄するためは経済ではなく安全保障を重視していること>を初めて米政権が理解したこと」

「北朝鮮指導部内も一枚岩ではない。内部で生じる雑音が対話の障害になるかもしれない」

「米朝がかなり進展しなければ日朝の進展はない。日本が交渉したいと言えばいうほど交渉は遠のく。どしっと構えるべき」

また、北朝鮮報道について、「常套句に頼った報道も目立つが、これは説明の放棄」との苦言も呈した。

 

 

 

司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

「魔法の言葉」に頼らない北朝鮮報道を

五味 洋治 (東京新聞論説委員 日本記者クラブ企画委員)

 北朝鮮の行動をメディアが伝える時、数多くの常套句がある。「自国の体制を守るため」というのもその1つだ。

 「なぜ北朝鮮は非核化に乗り出したのか」「なぜ経済発展を重視し始めたのか」「制裁解除を求めている理由は何か」

 まったく違う行動に対して、同じ説明をしていることがしばしばある。

 聖学院大学の宮本悟教授は、「こういうなんでも説明できるマジックワード(魔法の言葉)をジャーナリストが使うと、アウトだ。説明を放棄したことになる」と、指摘した。

 思い当たる節がある人は少なくないのではないか。他にも、マジックワードを乱用しているケースはかなりある。「指導者のカリスマを守るため」「実利を狙った」「揺さぶり戦術」などというのもある。

 もちろん、北朝鮮は自分たちの独自の論理で動くため、理解しにくいことが多い。しかし、できるだけ彼らの言葉をすくい上げ、考え方や、目的を説明しなくてはならないだろう。

 この他にも、長年北朝鮮の動向を観察してきた宮本氏ならではの見方が参考になった。しばしば、問題になる「朝鮮半島の非核化」という言葉の定義だ。

 元々、「北朝鮮の非核化」だったが、北朝鮮は「朝鮮半島の非核化」という表現にこだわり、最近では米国も使っている。

 北朝鮮は2016年7月6日に、「朝鮮半島の非核化」の定義5項目を発表している。

 宮本氏の説明によると、1.韓国にある米国の核兵器を全て公開 2.韓国から全ての核兵器と、その基地を撤廃し、検証 3.朝鮮半島とその周辺に核兵器を再び展開しないーなどだ。つまり、在韓米軍を含む韓国側の「非核化」も主張しているわけだ。

 いままさに、6月12日の米朝首脳会談を受けての交渉が続いているが、すでに難航している。こういう基本的な認識の差があいまいにされたままになっていることが、原因だろう。

 非核化をめぐる交渉は「数十年がかりの挑戦」(ポンペオ米国務長官)になるかもしれないが、宮本氏の話を聞きながら、より丁寧にみていきたいと感じた。


ゲスト / Guest

  • 宮本悟 / Satoru Miyamoto

    日本 / Japan

    聖学院大学教授 / Professor, Seigakuin University

研究テーマ:朝鮮半島の今を知る

研究会回数:11

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