2018年05月30日 13:30 〜 15:00 10階ホール
ポール・シェアード S&Pグローバル バイス・チェアマン 会見

会見メモ

 90年初めから日銀をウォッチし、日本経済の分析を行ってきた。

量的緩和策を正しく定義し、理解することが出口戦略を考える際に必要になるとした。

日銀は、量的緩和の修正に踏み切ったFRBをモデルにして戦略を練っていくべきとも。

 

司会 藤井彰夫 日本記者クラブ企画委員(日本経済新聞)


会見リポート

金融緩和の出口は遠い

 2008年9月の米大手証券会社リーマン・ブラザースの破綻は世界を金融危機の大渦に巻き込んだ。直後から米国の中央銀行の連邦準備理事会(FRB)は米国債など資産を大量に購入する量的金融緩和(QE)を始めた。世界に先駆けて2001年にQEを実施した日本銀行も再開、資産購入には慎重だった欧州中央銀行(ECB)もギリシャに始まったユーロ圏の債務危機の拡大を防ぐため実施に踏み切った。

 それから10年。米国はQEを終了し、政策金利を引き上げ、いち早く異例の金融緩和の出口に向かった。ECBも資産買い入れの停止時期を探る。一方、日銀は2013年に黒田東彦総裁のもとで大規模な金融緩和に動いたが、物価安定目標として掲げた2%の達成は遠く金融緩和の出口への道のりは遠い。

 日本に長らくエコノミストとして駐在し日銀ウォッチャーを務め、今はニューヨークで活躍するポール・シェアード氏は、米国のQEとその出口戦略を説明するとともに、日銀は粘り強くQEを続けるよう求めた。また、QEなど非伝統的な金融政策が、中央銀行の独立性を脅かすという議論は「的外れ」と断じた。

 確かに、シェアード氏が指摘するように日銀法第四条には「日本銀行は、その行う通貨及び金融の調節が経済政策の一環をなすものであることを踏まえ、それが政府の経済政策の基本方針と整合的なものとなるよう、常に政府と連絡を密にし、十分に意思疎通を図らねばならない」とあり、政府と日銀の意思疎通の重要性を明記している。

 問題の本質は日本の財政の持続性だ。日銀が大量に国債を買い、その間に日本経済の潜在成長力が上がり、財政も健全化していくならば問題はない。現状は日銀が国債を買って長期金利をゼロに抑え込んでいるが、それがかえって政府の財政再建への取り組みを鈍らせているようにもみえる。シェアード氏は、日銀の国債購入は、政府債務(国債)を準備預金(中央銀行負債)に振り替えているだけなので、国債からの資金流出に伴う価格暴落などの財政危機の心配はないと言う。日本政府の債務も日銀の国債保有分を除けばたいしたことはないという議論も最近よく耳にする。果たして本当にそうだろうか。シェアード氏の熱心な解説を聞いても、まだその疑問は消えなかった。


企画委員 日本経済新聞社上級論説委員兼編集委員  藤井 彰夫

ゲスト / Guest

  • ポール・シェアード / Paul Sheard

    米国 / USA

    S&Pグローバル バイス・チェアマン / Vice Chairman, S&P Global

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