会見リポート
2018年05月23日
16:30 〜 17:30
10階ホール
総会記念講演会 出口治明・立命館アジア太平洋大学学長 「歴史を学ぶ大切さと大学教育」
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会見リポート
企業人から大学人へ 歴史家魂で教育に全力
原 真人 (朝日新聞社編集委員)
歴史とは「見方」である。出来事をどの立場から、どう解釈するかによって、それぞれがまったく別の話になってしまうからだ。
それはかねて承知のことであったはずなのだが、出口治明さんにかかるとおなじみの歴史上の出来事がまったく異なる風景に見えてしまうから不思議である。
もともと保険業界で、そしてベンチャー創業者として活躍し、経済界で広く知られる存在だった。それが最近では多くの著作を通じ、むしろ歴史家としての顔のほうが有名になった。
「教材は過去にしかない。歴史は最大のケーススタディー」という。一方で「カエサルが言ったように人間は見たいものしか見ない。色眼鏡で世界を理解している」。どちらもその通りだろう。
とはいえ、凡人にはなかなかそのタコツボから抜け出せない。どう抜け出したらいいものか。出口さんは「タテ(歴史軸)、ヨコ(世界比較)、算数(数的なエビデンス)で物事を考えることが有効」と助言してくれた。
その出口さんが大学の学長になった。どういう動機からなのだろうとかねて思っていたが、講演を聴いて思いあたった。いま若者たちは少子化、超高齢化、低成長という難しい時代を前に「未来は暗い」と考えるようになった。そんな事態に出口さんの歴史家魂、ベンチャー魂に火が付いたのではなかろうか。
大分県・別府市にある立命館アジア太平洋大学(APU)はユニークな教育をする大学のようだ。世界90カ国から集めた留学生3000人が学生の半分を占めるという。
「いわば小さな地球、若者の国連です」。ここでの教育に、企業人として、歴史家として培ってきた経験知を注ぎ込み、若者の未来の可能性を広げよう、未来を拓こうとしているのだろう。そう受け止めた。
ゲスト / Guest
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出口治明 / Haruaki, Deguchi
立命館アジア太平洋大学学長 / President, Ritsumeikan Asia Pacific University