2018年04月11日 17:30 〜 19:30 10階ホール
試写会「マルクス・エンゲルス」

会見メモ

原題は「The Young Karl Marx」。1840年代のヨーロッパでは産業革命によって経済格差が生まれ、貧困の嵐が吹き荒れていた。

独自の経済論を展開したことでドイツを追われたカール・マルクスはフランスでフリードリヒ・エンゲルスと出会う。

二人が『共産党宣言』を執筆するまでの日々を描く。

2017年フランス、ドイツ、ベルギー合作。

公式サイト

岩波ホール映画案内

写真「マルクス・エンゲルス」© AGAT FILMS & CIE - VELVET FILM - ROHFILM - ARTEMIS PRODUCTIONS - FRANCE 3 CINEMA – JOUROR – 2016

 


会見リポート

恋愛・友情ありの人間ドラマ

 学術的で難解な内容を予想していたが、図らずも、恋愛や友情を織り込んだ熱い「青春映画」だった。今日の世界の形成に深く影響を与え、いまもなお、力を持ち続ける偉大な思想が生まれるプロセスには、人間くさいドラマが幾層にも重なり合っていた。

 物語の舞台は1840年代の欧州。英国で起こった産業革命が社会を分断していた。資本家は搾取を続け、市民は昼夜働いても貧困から抜け出すことはできず、人間の尊厳さえ奪われていく。持つ者と持たざる者の格差は拡大する一方だった。こうした環境の中で、「資本論」が芽吹いていく。

 カール・マルクスとフリードリヒ・エンゲルスの2人の青年が心に抱いていたのは激しい怒りだけではない。現状を嘆き、具体策のないスローガンを叫ぶだけでは改善しないことを認識し、不条理の根本を冷徹に見抜き、それを凌駕するための理論を模索していく。

 その中で、当初ぎこちなかった2人が互いの著作を評価し合い、友情を固めるシーンがある。エンゲルスが書いた英国の労働者階級に関する論文について、マルクスが「前人未到の第一級の論文だ」と褒めた上で「なぜ事情にこんなに精通しているのか」と尋ねる。

 エンゲルスは「実は恋愛のおかげだ」と打ち明ける。彼は貧困の状況を調べるためにスラム街に通い、そこの女性と恋仲になり後に結婚することになる。マルクスにも「糟糠の妻」がおり、パリ、ブリュッセルなどを転々とするマルクスを支え続けた。

 だが2人が挑んだ問題はいまだに解決していないどころか、悪化しているようにさえ見える。世界経済を牛耳るIT系巨大企業に富が偏在する一方、1日1ドル以下で暮らす人々も多いのが今日の姿だ。今、再びマルクスに脚光が当たるのも「むべなるかな」ということだろう。


共同通信社論説委員  高山 一郎

ゲスト / Guest

  • マルクス・エンゲルス / The Young Karl Marx

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