2018年01月25日 14:00 〜 15:00 9階会見場
キャサリン・サリバンさん ノーベル平和賞受賞を支えたICAN「被爆者担当」 会見

会見メモ

ヒバクシャStories(日本語)

Hibakusha Stories(英語)

 

司会 土生修一 日本記者クラブ事務局長

通訳 池田薫


会見リポート

「核攻撃から身を守る唯一の方法は、核兵器全廃」

高橋 弘司 (毎日新聞出身(横浜国立大学・都市イノベーション研究院准教授))

 北朝鮮の核・ミサイル問題が注目される中での来日とあって、サリバンさんからは強い危機感を抱いた発言が目立った。

 サリバンさんは、東京都内で1月22日、弾道ミサイルの飛来を想定した避難訓練が初めて実施されたことに「シェルターに入って避難すれば身を守れるのでしょうか」と疑問を投げかけ、その10日ほど前、ハワイで弾道ミサイルの脅威が迫ったとする避難警報が流れた出来事に触れた。ハワイに住む大学時代のルームメイトは、悲鳴を挙げる3人の子供を抱え、誤報とわかるまでの38分間、「人生の終わり」を覚悟したと明かした。その上で、サリバンさんは「核攻撃から身を守る唯一の方法は、核兵器を全廃すること」と強調した。

 サリバンさんがそう信念を持って言い切れるのは、広島、長崎の被爆者から数えきれないほどの被爆体験を聞き、核攻撃がもたらす壊滅的な被害や放射能による後遺症の深刻さを熟知しているからにほかならない。多数の被爆者を米国に招き、延べ約4万人にのぼるニューヨークの高校生らに被爆体験を伝える活動を展開、今年度のノーベル平和賞を受賞したICAN内部で、「被爆者担当」とも言われる存在だ。昨年12月の平和賞授賞式でも、そのスピーチが注目されたカナダ在住の被爆者、サーロー・節子さんの車いすを押すなど寄り添い続けた。

 「『核の傘』は根拠のない通説で、欺瞞だ。それを人々に信じ込ませることは知性への侮辱ともいえる」と批判。いったん核攻撃が起これば報復がエスカレート、地球は広範囲に放射能汚染され、気候変動が起こり食料生産に支障が出て、飢饉さえ生じると警告した。

 母国・米国ではトランプ大統領の登場で、核使用のハードルが低くなっていると厳しい現実を認めながらも、サリバンさんは、核兵器禁止条約採択を機に「核兵器を人道的側面から見るという変化が起こっている」と国際潮流の変化を指摘。条約発効に必要な50カ国以上の署名・批准を取り付けるため、「核被害の実態を一番よく知る被爆者のメッセージが大切」と熱っぽく訴えた。


ゲスト / Guest

  • キャサリン・サリバン / Kathleen Sullivan

    アメリカ / USA

    「核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN〈アイキャン〉)被爆者担当 / Director, ICAN "Hibakusha Stories"

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