2017年03月01日 11:00 〜 12:00 10階ホール
フラナガン アイルランド外務貿易大臣 記者会見

会見メモ

英国のEU離脱問題について、アイルランドと英国の特別な関係と歴史を語り「これからもオープンな対英関係を続けたい」と。トランプ政権については「新政権の方針をしばらくは見守るしかない」。

 

司会 土生修一 日本記者クラブ専務理事

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

トランプ政権への不安もにじむ

大木 俊治 (毎日新聞社論説委員)

英国の欧州連合(EU)離脱を最も深刻に受け止めている国と言ってもいいだろう。英国と陸地でつながる唯一の国であるアイルランドにとって、これまで自由だった英国との人や物資の往来はどうなるのか、ようやく落ち着いた北アイルランド和平にどう影響するのか。会場からの質問に「何とか今のオープンな国境を維持したい。(今後の英国とEUとの交渉にあたって)他のEU諸国には2国間の特殊な状況を理解してもらうよう努める」と繰り返した。

 

一方で、アイルランドのビジネス環境が米誌フォーブスに欧州トップと評価されたことを紹介するなど、英国に欧州の拠点を置いてきた日本の金融・保険企業にとって、自国が絶好の代替地となることをアピールするしたたかさも見せた。

 

会見の冒頭で「報道の自由の重要性」を訴えたこと、広島への訪問を踏まえて「核廃絶を目指す立場を日本と共有する」立場を強調したのも印象に残った。通常なら日本への儀礼的発言として聞き流しただろう。だが米国に誕生したトランプ政権が自身に批判的な報道機関を敵視し、核戦力の大幅強化を打ち出して国際社会の懸念を呼んでいる中では、儀礼以上のメッセージが込められていたと受け止めたが、うがちすぎか。

 

トランプ政権についてどう思うかという会場のアイルランド紙記者からの質問に外相は、政権が打ち出した移民規制策に米国のアイルランド系社会が懸念を伝えたことを紹介した。また、歴代の米政権とアイルランドが良好な関係を築いてきたこと、ペンス副大統領もアイルランド系であることなどを指摘して「新政権とは建設的な対話を続けていきたい」と前向きな姿勢を見せながらも、「とにかく今はもう少し米政権の方針が落ち着くのを待つしかない」と不安もにじませた。米政権の行方が見通せない不安はどの国も同じなのだろう。


ゲスト / Guest

  • チャールズ・フラナガン / Charles Flanagan TD

    アイルランド / Ireland

    外務・貿易大臣 / Minister for Foreign Affairs and Trade

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