会見リポート
2015年01月31日
10:30 〜 12:00
10階ホール
トマ・ピケティ氏 著者と語る 『21世紀の資本』
会見メモ
『21世紀の資本』の著者 トマ・ピケティ氏が会見し、記者の質問に答えた。
司会 会田弘継 日本記者クラブ企画委員長(共同通信)
代表質問 軽部謙介 日本記者クラブ企画委員(時事通信)
通訳 長井鞠子(サイマル・インターナショナル)
会見詳録
和文
transcript(英文)
会見リポート
「不平等是正を」明快に持論展開 アベノミクス批判も
小此木 潔 (朝日新聞出身)
相次ぐ質問に「私は日本のことを学ぶためにやって来ました。教訓を垂れるためではありません」などと笑いを誘いつつ、疲れも見せずに答える姿が印象的だった。
日本の政策課題は「税制をもっと累進的にして富裕層により多くを負担させる一方、若者や低所得層には減税策をとること」である、と明快。同時に、「労働市場を改善し、パートなどの労働者や若者の待遇と社会保障を向上させたり、女性に対する不平等な扱いをなくしたりすることで、出生率上昇・人口増加、経済成長につなげる。これが日本の中心課題」と言い切った。
さらに「若い人や女性を利する改革」が日本に必要であるのに、「万人に対する課税である消費税の引き上げが良いことだと(日本の政治家や官僚などが)考えているのは理解に苦しむ」と、メディアなどにも広まっている消費増税不可避論を真っ向から批判した。
「富と所得の不平等が拡大している日本で、現状は米国よりましだなどと言って、不平等を是正する政策をとらずに模様眺めをしていてはいけない」とも述べ、国民が政治に圧力をかけて不平等是正への政策努力を強化するよう熱っぽく説いた。
裕福な人がもっと豊かになれば富が貧しい人にしたたり落ちる、という「トリクルダウン」理論については、「これまで失敗だったのに、今後はうまくいくなどとは思えない」と、ばっさり。世界の主要国は不平等がひどくなかった時代のほうが経済成長率は高かったことを挙げ、再分配政策が繁栄の礎だと強調した。
名指しこそしなかったが、こうしたピケティ氏の発言は安倍政権の経済政策に対する批判であると同時に、民主党など一部の野党関係者にも耳の痛い話だろう。拡大する不平等に有効な手を打たないできた政治はもちろん、経済学者やジャーナリズムへの警鐘でもある。
ゲスト / Guest
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トマ・ピケティ / Thomas Piketty
フランス / France
経済学者 / Economist
研究テーマ:21世紀の資本