2013年04月15日 13:00 〜 14:30 宴会場(9階)
研究会「エジプト革命2年後のいま」 池内恵・東京大学先端科学技術研究センター准教授

会見メモ

エジプト革命2年後のいま (1)

池内恵・東京大学准教授が、革命2年後のエジプトの政治状況について分析した。軍最高評議会(SCAF)が移行期の統治ルールを確立できなかったことで、最高憲法裁判所などの司法が主導権を握るようになった。一時的ではあるにせよ、このことが政治の混迷の度合いを薄めることに寄与している、と。


司会 日本記者クラブ企画委員 脇祐三(日本経済新聞社)


会見リポート

エジプトの国づくりは大河ナイルのごとし
「革命から2年が経過したエジプトの現状をどう読み解くか」について、現地で観察を続けてきた池内氏によるディープな分析が行われた。30年に及んだムバラク前政権が民衆の抗議デモによって倒された後、軍最高評議会による暫定統治、民主的な選挙を経て、昨年、イスラム主義勢力主導のモルシ政権が誕生した。しかしながらその後も、国内各勢力による対立と混乱が続き、新しい国づくりの終着点は一向に見えない。このような「移行期政治の不確定性」を「構造的に把握すること」に主眼が置かれた。
興味深かったのは、ムバラク後のエジプトが、いまだに「正統性」のある新政権を樹立できずにいる一方で、国家の「合法性」や「継続性」は維持され盤石であるという指摘だ。とりわけ、司法府や裁判官が意気軒高である。軍最高評議会によって、ムバラク政権時代の憲法の効力が停止されたにもかかわらず、憲法裁判所は過去の判例に基づいて、すでに議席が確定した人民議会選挙を無効にするといった政治的判断を下し、民主化プロセスに重大な影響を与えている。
新しい国づくりの主導権を握った「ムスリム同胞団」は、治安維持や外交を円滑に進めるため、軍と警察の取り込みを図っている。これに対し、選挙で惨敗した「世俗派・リベラル派」も、組織力の弱さをカバーし、イスラム主義勢力に対抗するため、軍と警察による介入に密かに期待しているという。かくして、軍と警察は徐々に復権し、とくに軍は今後自らの既得権益を守るため、一時的に政治に介入する可能性もあると分析する。
エジプトの歴史の流れは、大河ナイルのごとく実にゆったりである。個々の政治の動きを追いかけるだけでなく、全体を見渡し、構造的な把握をすることが大切だという池内氏の指摘にうなずかされた。


NHK解説委員 出川展恒

ゲスト / Guest

  • 池内恵 / Satoshi Ikeuchi

    日本 / Japan

    東京大学先端科学技術研究センター准教授 / Asso. Prof., Research Center for Advanced Science and Technology, the University of Tokyo

研究テーマ:エジプト革命2年後のいま

研究会回数:1

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