2012年12月06日 15:00 〜 16:30 10階ホール
研究会「領土問題」④ 朱建栄 東洋学園大学教授

会見メモ

研究会「領土問題」の4人目のゲストとして、朱建栄・東洋学園大学教授が、「島の領有権紛争と日中関係」のテーマで話し、記者の質問に答えた。

司会 日本記者クラブ企画委員 川村晃司(テレビ朝日)


会見リポート

放たれた〝虎〟を檻に戻せるか

竹岡 倫示 (日本経済新聞執行役員)

2012年は日中両国が「国交正常化40周年」を盛大に祝う年になるはずだった。しかし「尖閣諸島問題という〝虎〟を檻から放って」しまい、両国関係は「国交正常化以来最悪」と言われる事態に陥った。


この研究会の後も状況は変わらず、中国の船舶や航空機が連日のように尖閣諸島に接近して緊張が高まっている。影響は政治、外交分野にとどまらず経済、文化、スポーツ交流などにまで広く及んでいる。


こうした状況を見て朱氏は「国と国の問題で宗教、民族、領土の3つには触ってはならない」という銭其琛・元副首相(元外相)の言葉を改めて思い出すそうだ。これらは互いに譲歩の余地のない問題だからだ。


では、この事態をどう打開すればいいのか。「今世紀初めぐらいまではこういうときに水面下で機能する要人同士のパイプがあった」と朱氏は指摘し、田中角栄氏と周恩来氏、鄧小平氏と大平正芳氏、伊藤正義氏、竹下登氏、そして野中広務氏と曽慶紅氏の名前を列挙した。ところが今は「そういうパイプがない」。


かすかな希望は、両国が新しい体制になることだ。中国では昨年11月の共産党大会で胡錦濤氏から習近平氏にバトンが引き継がれた。「対日重視」と言われた胡氏に対し習氏の姿勢はよくわからないが、3月には新しい首相や外相が決まる。


日本でも昨年暮れ、安倍晋三政権が発足した。中国では「内心の警戒と、相互利益重視で手を打つかも知れないという期待が混在」しているという。安倍氏は初めて政権に就いた06年、前の小泉純一郎政権下で凍りついた日中関係の「氷を割る旅(訪中)」を実行したからだ。


両国の新政権は冷静に対話を積み上げ、大局に立って「放たれた〝虎〟をもう一度檻に戻す」ことができるか。朱氏は「雨降って地固まることもある」と期待を込めた。


ゲスト / Guest

  • 朱建栄 / Zhu Jianrong

    中国 / China

    東洋学園大学教授 / Professor, Toyo Gakuen University

研究テーマ:領土問題

研究会回数:0

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