2011年04月06日 14:30 〜 15:30 10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」 震災復興ビジョン発表会見 小宮山宏前東大総長

会見メモ

小宮山宏・前東大総長・三菱総合研究所理事長を中心とする研究者・政治家グループが東日本大震災からの復興に向けた「日本の地域『新生』ビジョン」を菅総理に提言したあと、記者会見して発表した。


≪「単なる復旧ではなく復興であり、日本はひとつ先の社会をめざすべきだ。文明の最先端が見える社会を作ろう」≫

小宮山さんは課題解決型の次世代社会モデルとして「プラチナ社会」を提唱しており、今回の大震災に際して、新しい社会づくりをめざすビジョン作りを訴えた。「日本は明治以来、欧米の産業技術を導入し、産業振興でGDPを増やせば暮らしが良くなるモデルでやってきた。そのモデルは1968年、GDP世界2位となることで、達成した。すでに自分たちでモデルを作り出す時代に入っている。それがプラチナ構想ネットワークだ」と説明。震災復興も、「自分たちで目的を決め、何がほしいのかを決めることだ。もう、坂の上の雲はない」と述べた。

原発事故について、「原子力は20世紀後半から21世紀前半にかけてのつなぎのエネルギーであり、自然エネルギーが中心になる。今回の福島原発事故は自然エネルギー加速のきっかけになる」と述べ「原発が安全だと信じ過ぎていた。今回のような事故は想定していなかった」と付け加えた。夏の停電について、電力消費が増える午前11時から午後3時の節電でピークカットし、LED電球に換え、太陽電池を投入すべきだ、と提案。電力の安定供給のためスマートグリッドの導入をよびかけた。

司会 日本記者クラブ企画委員 倉重篤郎(毎日新聞)


小宮山宏さんが提唱するプラチナ社会研究会のホームページ

http://platinum.mri.co.jp/



提言(概要)
http://www.jnpc.or.jp/files/2011/04/801c361ee419f94af68d58efff567b48.pdf
提言(本文)
http://www.jnpc.or.jp/files/2011/04/dae39d9e983ac786949d6dc129b373b8.pdf

会見リポート

復興を復旧にするな

泉 宏 (企画委員 時事通信出身)

「千年に一度」の東日本大震災から日本はどうしたら立ち直れるのかをテーマに「日本の地域『新生』ビジョン」をまとめた。「復興を復旧にするな」を合言葉に国会議員や学者などと知恵を絞った復興ビジョン。


①震災を教訓とした日本社会の再生②次の世代が生きる地域の「新生」③福島原発事故の教訓を生かしたエネルギー戦略の「新生」─などが柱で、復興構想会議発足に先立ち、菅直人首相に手渡した。「私が人生で経験した最大の災害。桜が満開になるのも気づかなかった」と苦笑し、「ピンチはチャンス」と考えて被災地域の住民が「夢と希望」を持って働き、生活できる地域をつくる必要性を熱っぽく訴えた。


前東大総長。大学時代はアメリカンフットボールに熱中した工学博士。省エネを実践する通称「小宮山エコハウス」を新築してから9年。地域からの日本の活性化を目指し、100を超える自治体などを会員とするプラチナ構想ネットワークの推進役として「震災新生特区の適用」「再生可能エネルギーやスマートグリッドの大胆な導入」などを提言した。


「今回の福島原発事故は日本のエネルギー供給の在り方を見直す契機」と分析。「2050年までの原子力依存からの脱却」を目指し、太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーを利用しつつ電力の需給バランスを最適化するスマートグリッドにより、被災地だけでなく全国で先進的なエネルギー供給システムを確立すべきだと語る。


関東大震災直後に首都東京の復興を主導した後藤新平氏については「彼にはロンドン、パリというモデルがあった。今回はもう坂の上の雲はない」と日本の置かれた立場の変化を強調。エネルギー、環境、高齢化という国際社会が抱える難題解決へのモデルとなる「課題解決先進国」に生まれ変わる絶好のチャンスだと訴えた。


ゲスト / Guest

  • 小宮山宏 / Hiroshi KOMIYAMA

    日本 / Japan

    三菱総合研究所理事長・前東京大学総長 / Chairman, Mitsubishi Research Institute

研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」

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