2016年05月19日 14:30 〜 15:30 9階会見場
アラグチ イラン外務次官 会見

会見メモ

イランのアラグチ外務次官が会見し、記者の質問に答えた。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
通訳 稲見誉弘(イラン大使館)


会見リポート

自信深める中東の大国

吉武 祐 (朝日新聞社国際報道部)

イランは、2002年に発覚した核開発問題で制裁に苦しんだ日々に終わりを告げた。アラグチ氏は会見の冒頭、今や主要国の経済発展のパートナーとなったことを強調した。アフマディネジャド前政権下でテヘラン特派員だった私には、このような日が来るとは想像できなかった。

 

「1月に核合意履行の日を迎えた後、6カ国の国家元首がイランを訪問した」。アラグチ氏はイタリアや韓国を例に挙げた。ロハニ大統領が仏伊歴訪で、エアバス社の118機購入を含む計500億ドル分の協定や覚書を結んだと報告。日本には石油・天然ガスや自動車などの分野で投資を呼びかけ、新幹線や原発建設での協力希望まで飛び出した。

 

「混乱を極める中東でイランは唯一と言っていいほど治安がよく、政治的に安定している」。こんな言葉も、以前とは違って胸に響く。

 

ここまで状況を変えたのは、ロハニ政権の対外融和路線だ。アラグチ氏は駐日大使を経て、外務次官として核問題の協議で米英仏中ロ独と渡り合った。「わが国の外交政策は核協議をモデルとして進めている」。キーワードは「ウィンウィン」だ。国際社会を安心させる発言だった。

 

ただ、核関連の制裁が解除されても「一部の企業・金融関係者は(イランとの取引に)まだ完全な信頼を置けないと考えている」と認めた。「10年間かけて壊れたものが、4カ月で元に戻るとは思わない」

 

米国にとってイランは依然としてテロ支援国家で、核以外の独自制裁も存在する。核合意の履行が壊れないという絶対の保障もない。ロハニ政権の後に保守強硬派が再び伸長したら……。そんな不安も浮かぶ。

 

中東の大国として自信を深める一方で、そう簡単に制裁前に戻るわけではないという現実も認識する。アラグチ氏の率直で冷静な語り口から、現在のイランが置かれた状況がよくわかった記者会見だった。


ゲスト / Guest

  • セイエッド・アッバス・アラグチ / Seyed Abbas Araghchi

    イラン / Iran

    外務次官 / Deputy Foreign Minister

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