2020年05月29日 14:00 〜 15:00
「新型コロナウイルス」(25) ライブ・エンタ-テインメント業界は再起できるのか? 矢内廣・ぴあ社長

会見メモ

コロナ禍を受け、ライブ・エンターテインメント業界は2月下旬からライブ、舞台、スポーツなどのイベントを中止・延期してきた。

矢内廣・ぴあ社長が登壇し、業界の現状や再起に向け必要となる施策について語った。

司会 小林伸年・時事通信社解説委員長 

「新型コロナウイルスによるライブ・エンタテインメント業界へのダメージについて」(5月末現在/ぴあ総研調べ)

ぴあ株式会社

 

主な内容は以下。

■中止・延期による消失額は6900億円(推計値)

ぴあ総研の調査結果として発表した。入場料が必要なライブ、演劇、スポーツなどのイベントで、中止・延期により売り上げがゼロもしくは減少するイベント・試合は今年2月から来年1月までの1年間で約43万2000件、損失は6900億円に及ぶと推計。年間の市場規模9000億円の77%を喪失するとした。

 参考:6900億円の内訳

   ・音楽系: 約3,300億円

   ・演劇・ステージ系: 約1,600億円

   ・スポーツ系: 約1,300億円

   ・イベント系その他: 約700億円

 

■「『止血』だけでなく『輸血』を含めた支援策を」

ライブ・エンタメ業界の特徴は事業を構成する人の裾野の広さにある。スキルやノウハウをもった職人集団により成り立っており、その多くは中小事業者やフリーランス。廃業、人材流出が起きれば、業界は再起できなくなる。中止・延期に対する「止血」だけでなく、政府には1年先に業界が生き残れるよう「輸血」を含めた支援を考えてほしいと訴えた。

 

■「ライブ・エンタメ業界を基幹産業の一つに」

ライブ・エンタメ業界はここ10年で市場規模が2倍に拡大するなど、成長市場であると説明。グッズ等を含めた経済波及効果、地方経済への貢献は高いと指摘した。また東日本大震災の例に、文化・芸術には心の癒やし、生きる勇気を与える力がある点も強調した。


会見リポート

エンタメ業界に一括支援を

小間井 藍子 (読売新聞社文化部)

 コロナ禍により多大な損失を被ったライブ・エンターテインメント業界。果たして再起は可能なのか? チケット販売大手「ぴあ」の矢内廣社長が展望を語った。

 冒頭に衝撃的な数字が発表された。コロナ禍により、入場料が必要な舞台や音楽コンサート、スポーツなどイベントの中止や延期は今年2月から来年1月までの1年間で約43万2000本、損失は年間市場規模の77%にあたる約6900億円と推計されるという。ぴあに集積する情報から市場調査を行う「ぴあ総研」が算出した。音楽系が3300億円、演劇・ステージ系が1600億円、スポーツ系が1300億円、その他イベント系が700億円という。

 この推計値には、ウイルス流行の第2波、第3波など不確定要素は加味されていない。「順調に行ったとしても元通りになるには来年1年はかかるのでは」との分析を示した。政府の第2次補正予算で文化芸術・スポーツ団体への財政支援約560億円、J―LODlive助成(コンテンツグローバル需要創出促進事業費補助金)約878億円などが確保されたことについては、「本当にありがたいが、毀損する6900億円に比べるといかにも小さいと言わざるを得ない」とし、「予備費10兆円を活用し、ライブエンタメ業界をひとくくりにした支援スキームを」と訴えた。ライブエンタメを支える人材の流出や廃業が相次げば、業界として立ち上がれなくなる恐れもあるとした。

 政府に対しては、ライブエンタメを国の基幹産業と捉えてほしいと要望した。矢内社長は、「ライブエンタメには経済的な効果と、人々を癒やし、勇気づける情操効果がある」と指摘。会見の視聴者からの質問場面で、「文化芸術は不要不急」との意見がSNSで散見されることについては、「そうした声は承知しているが、逆にコロナ禍を機に必要性を実感した方も多いのでは」と答えた。


ゲスト / Guest

  • 矢内廣 / Hiroshi Yanai

    日本 / Japan

    ぴあ株式会社代表取締役社長 / Representative Director and President of PIA Corporation

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:25

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