2019年06月10日 14:00 〜 15:00 10階ホール
「野党に聞く」(1) 吉川元・社民党幹事長、選対委員長

会見メモ

「政治の底が抜ける感じを受けてきた」。安保法制、異次元緩和などを挙げ、安倍政治の6年半を批判。「放置しておけば取り返しのつかないことになる」「(参院選を)安倍政権を終焉させる一つのきっかけにする」と強調した。参院選に向けては「暮らし、地方、憲法の危機を守る戦いを組み立てていきたい」。10月に予定される消費増税には反対の姿勢をあらためて強調。過去の増税を振り返り、社会保障にいくべき税収が所得減税、法人減税に使われているとし、「いつまでたっても安心できる社会保障制度が構築されない。3つの基幹税をどうバランスすべきか。年金も含め議論すべき」。社民党にとって今回の参院選は国政政党としての存続が問われる選挙でもある。「危機的状況。覚悟を持って戦う」とした。

 

司会 倉重篤郎 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)


会見リポート

生き残り策、競演の場に

倉重 篤郎 (企画委員 毎日新聞出身)

 野党党首級を連日呼んだ「野党に聞く」シリーズ。国政選挙を控え、安倍(晋三首相)一強の中でどう戦うのか。総じて家計重視の経済政策が強調されたが、ダブル選の緊張感が薄れていく中で、共闘というよりは自党をいかにサバイバルさせるか、その競演の場となった印象だ。

 枝野幸男・立憲民主党代表は、策定中の党国家ビジョンを紹介、高齢化、価値観多様化、貧困格差拡大などの課題解決のためには、未来を切り開く新しい民主主義が必要だとし、「企業収益重視から家計所得重視へ」「多様性と違いを認め合う社会」「議会制民主主義のバージョンアップ」という3つの転換が必要だと力説した。

 この間の党運営については「2年前に地方議員ゼロが現在では地方議員688人、地方機関44。着実に体制整備が進んでいる」と自負、今回の参院選では多様な候補者を擁立したとし、「安倍の顔も見たくもない層と、何が何でも安倍支持層と世論が二分、間の3、4割の層に投票してもらえるかが勝負」だとした。

 玉木雄一郎・国民民主党代表もまた「家計第一」を訴えた。従来の経済政策が、財源がないことを理由に教育、科学技術分野への戦略的投資を怠りそのことが国力の低下につながった、として、この際「未来投資国債」を発行するとの考えも打ち出した。「つくろう、新しい答え。」という代案提示路線の一環だとした。

 野党共闘については、「32の一人区で一本化したが、2016年参院選ほど甘くない。国民と立憲と支援組織が一体とならないと勝てない」と情勢の厳しさを認め、共産党との共闘について問われ「衆院選は政権選択選挙になるので曖昧な対応はできない」と一定の距離を置く考えを示した。

 志位和夫・日本共産党委員長もまた「減らない年金」などの経済政策をパッケージで提示、7・5兆円の財源として大企業、富裕者優遇税制の見直しを根拠として挙げた。「個人の尊厳とジェンダー平等」も訴え、先の統一地方選では党当選議員の52%が女性だったいう実績を強調した。

 野党共闘路線への転換については「日本政治にとって新たな展開をもたらした。共闘が成功するまでトコトンやる」と表明、天皇制に安易な妥協をしているのではないかとの質問には、戦前とは天皇制の憲法上の位置づけが根本的に変わったとし、儀礼的な敬意は払うが過度な礼賛には反対する、と述べた。

 馬場伸幸・日本維新の会幹事長は、野党共闘とは距離を置いた上で、大阪ダブル選の勝利を背景に大阪都構想実現に自信を見せ、これを維新が目指す道州制導入の第一歩として、今後も地方から国を変えていくと強調。参院選対策としては、比例候補を選挙区候補とセットで擁立する新しい方式を愛知、東京などで展開していく方針を明らかにした。

 橋下徹氏の役割について問われ、「日本政治が混乱し、本当の意味での二大政党制になる時が来ると思うが、それを成立させるためにも橋下徹が必要だと思う」と述べた。

 吉川元・社民党幹事長は、「日本政治の底が抜けた」と歯切れよく安倍政治を批判したものの、17年衆院選に続き今度の参院選でも比例得票率が2%を下回ると政党要件を失うことについて、党勢の退潮を認め、「社民党がなくなるという覚悟で選挙戦を迎える決意だ」と述べた。


ゲスト / Guest

  • 吉川元 / Hajime Yoshikawa

    日本 / Japan

    社民党幹事長、選対委員長 / secretary-general,Social Democratic Party

研究テーマ:野党に聞く

研究会回数:1

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