2019年05月30日 15:30 〜 16:30 9階会見場
パトリシア・フロア駐日EU大使 会見

会見メモ

5月23日~26日に行われた欧州議会選挙をパトリシア・フロア駐日EU大使が総括。「親EU派の勝利」を強調した。中道路線の既存2大政党は議席を減らしたものの、親EU派を掲げる緑の党とリベラルが伸長したことが要因。結果として親EU派の議席が3分の2以上になった点について「より強い結果を生み出すことにつながった」。EU懐疑派が25%程度の議席を獲得したことには「一つの派閥としてまとまれるのか、議決権がどうなるのか、まだ明らかではない」とした。

 

司会 鶴原徹也 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)

通訳 西村好美(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

欧州議会選は「親EU派勝利」

樋口 直樹 (毎日新聞社編集委員)

 欧州連合(EU)の将来を占う欧州議会選(5月23~26日)は、EUを牽引してきた中道右派・左派の2大会派が過半数を割り込む一方、統合を支持する中道リベラル会派や環境政党が躍進。欧州統合に懐疑的で移民排斥などを訴える反EU勢力も拡大した。

 この結果をどう見るか。フロア大使は「親EU派の勝利」を宣言した。だが、質疑で参加者から「強く団結したEUの姿を示したと言えるのか」との疑念が示されたり、「極右の大躍進を伝えた日本の新聞は大間違い」と大使に賛同する声が上がったりするなど、選挙結果の評価が定まっていないことを印象づけた。

 大使はまず、投票率が前回の2014年より20%近く高い約51%に達した点を強調、「欧州の民主主義の勝利」とたたえた。英国のEU離脱を巡る議論によって「人々がEUの価値を真剣に考えるようになった」との見方も示した。その上で「親EU派は2大政党が議席を減らしたが、リベラル会派や緑の党が伸びたため、(議席数の)3分の2以上を占めた」と指摘。「EU懐疑派は25%。親EU体制が確立した」と断じた。

 今後、欧州議会は執行機関・欧州委員会の人事を承認するが、2大会派の過半数割れで合意形成に手間取る可能性も。大使は「理想的なスケジュール」として10月に新たな顔ぶれが決まり、11月初めには新委員会が機能し始めると予想したが、「遅延もありうる」と断言を避けた。

 選挙結果の見方は立場や視点によって異なるが、既成政党が衰退し、特定の政策を重視する会派や右派ポピュリズムが勢力を増すなど、欧州政治の枠組みが変動していることは確かだ。「活力ある民主主義は加盟国市民の多種多様な意見を反映しなければならない。新たな欧州議会はこの多様性を代表するものになる」との大使の発言通り、EUの覚悟が問われることになる。 

 


ゲスト / Guest

  • パトリシア・フロア / Patricia Flor

    EU / European Union

    駐日EU大使 / Ambassador of the European Union to Japan, Head of the Delegation

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