2018年12月20日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「日本の労働を誰が支えるのか」(4) 古川幸太郎・西日本新聞記者

会見メモ

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

体当たりルポ

須佐美 文孝 (共同通信社生活報道部長)

 安倍政権が外国人就労の拡大にかじを切った。新たな在留資格制度が新年度からスタートする。単純労働分野の門戸を開くもので、従来方針を転換。移民政策を事実上解禁したとも言える。事態の展開の速さに、慌てて参考文献を数冊買い求めた。

 その中の1冊が西日本新聞のキャンペーン報道をまとめた『新 移民時代』(明石書店)だった。留学生を巡るカネの流れや日本語学校の実態、送り出し国の現地事情など、かねて知りたかったこと、これから報じていかなければと頭に描いていたことの多くが書き込まれている。しかも足を使った取材に基づく一次情報として。キャンペーン報道が始まったのは約2年前、書籍化は1年前。その「先見の明」に、同じ取材者として正直「やられた」と思った。

 メイン執筆者の一人、古川幸太郎西日本新聞記者の講演は、取材の苦労話から始まった。福岡市内で英語や中国語とは異なるアジアの言葉を交わす外国人が集まっているとの噂を聞きつけたのが端緒だった。

 「なんで留学生なのに働いているんだ」―。素朴な疑問を問題意識に高め、雇用者側の取材拒否に遭いながら「張り込みや尾行」を続けた。留学生の母国ネパールに出張し「ノープラン、ノーアイデアだったが、現場に行けばなんとかなると思った」。体当たり精神で困難を突破してこそ面白いルポが書ける。ジャーナリズムの原点を思い出させてもらった。

 入管難民法改正について「問題点も浮き彫りになったが、真正面から外国人問題が取り上げられた。開国前夜と位置付けている」と評価。一方で、生煮えの新在留制度を「自治体任せで地域格差が生まれかねない」と懸念する。共生社会に必要な心構えとして「自分の子どもが外国でこんなことをされたら嫌だなということを外国人らにさせてはいけない」と指摘した優しさが印象的だった。


ゲスト / Guest

  • 古川幸太郎 / Kotaro Furukawa

    西日本新聞記者 / writer, Nishinippon Shimbun

研究テーマ:日本の労働を誰が支えるのか

研究会回数:4

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