2018年12月03日 16:00 〜 17:30 10階ホール
「消費税 これまで・これから」(4) 平野貞夫・元参院議員

会見メモ

司会 川村晃司 日本記者クラブ企画委員(テレビ朝日)


会見リポート

軽減税率など消費税引き上げ対策にすべて反対、「公平・公正・簡素」に反する

八牧 浩行 (時事通信出身)

衆院事務局職員や参院議員として現場に立ち会い、「消費税の生き字引」的な存在である。著書『消費税国会の攻防』には、悲願の大型間接税導入に心血を注いだ大蔵官僚と有力政治家。徹底抗戦を叫ぶ野党、調整に奔走する国対、そして議会の内外を飛びまわる記者たちの姿が描かれている。そのドキュメントそのままに裏話や思いを、83歳という年齢を感じさせずエネルギッシュに語りまくった。

 

大平正芳首相が1979年1月に財政再建のため「一般消費税」導入を閣議決定。同年10月、総選挙中に導入断念を表明したが大幅に議席を減らし、80年6月に急死した。中曽根康弘首相は87年2月、「売上税」法案を国会に提出したが、国民的な反対に遭い廃案に。竹下登首相時代の88年12月に消費税法が成立し89年4月1日、3%の消費税が創設されたが、直後にリクルート事件などの影響もあり内閣支持率が急落、竹下首相は同年6月に辞任に追い込まれた。その後も94年2月、細川護煕政権の国民福祉税構想が挫折、97年には橋本龍太郎政権の5%への消費税引き上げが“平成恐慌”の一因となった…。死屍累々の歴史であり、「消費税の呪い」といわれるゆえんである。

 

平野氏は88年に宮沢蔵相がリクルート事件に絡んだ際、蔵相辞任の説得役を務めたことや、消費税実現後も長期政権に意欲的だった竹下首相に指示され「税制改革後は政治改革実現を」とのビジョンを提案したことなど、多くの興味深い秘話も明かした。

 

安倍晋三政権は2012年の野田政権末期の3党合意にあった消費税の10%への引き上げを2回延期した末、19年10月の実施を決定しているが、軽減税率を設け、食品(外食、酒類除く)、日刊新聞については8%の税率を維持。住宅や自動車などの購入を減税や補助などで支援するほか、中小規模小売店でのクレジットカード払い購入に対し、増税分相当をポイント還元する方針である。

 

これらの対策について、平野氏は「全部反対です」ときっぱり。税制は国の骨格であり消費税は「簡素、公平、公正」が基本と苦言を呈した。議長秘書として仕えた前尾繁三郎氏(元衆院議長)の「税は国民に支持され共感を呼ぶものでなければならない」との戒めを紹介し、「このままでは格差が広がるばかり。国民を欺いてはいけない」と語気を強めた。

 

筆者は大蔵省記者クラブ担当記者として売上税騒動から国民福祉税構想までこれらをほぼすべて取材したので、感慨深かった。1989年3月31日の深夜12時の歴史的な瞬間に、大蔵省の主税局から大きな歓声と拍手が上がった光景は忘れられない。

                         


ゲスト / Guest

  • 平野貞夫 / Sadao Hirano

    日本 / Japan

    元参議員議員 / former member of the House of Councillors

研究テーマ:消費税 これまで・これから

研究会回数:4

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