2017年03月03日 15:00 〜 16:00 10階ホール
石原慎太郎 元東京都知事 会見

会見メモ

※会見での発言を訂正する文書を、石原事務所が3月7日午前に発表しました。こちらでご覧いただけます。内容についてのお問い合わせは石原事務所へご連絡ください。

 

東京都の築地市場移転問題で、豊洲移転を決めた当時の知事だった石原慎太郎氏が登場。石原氏は「知事に就任した時点で豊洲移転は既定路線になっていた。都庁や都議会、専門家が論議して決めたことを認めただけで、私だけに責任がある訳ではない」と述べた。また「築地にはランニングコストなどで費用がべらぼうにかかっている。科学者が安全だとしている豊洲に早く移転すべきだ」と主張した。

 

豊洲移転問題について知事時代の石原氏会見映像(石原事務所提供)

https://youtu.be/xi2lAqK4ED4

 

司会 橋本五郎 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

侍ならず、小池氏への怨念深し

倉重 篤郎 (企画委員 毎日新聞社専門編集委員)

 

「果たし合いに出かける侍」の構えとはいかなるものか。そんな期待と関心で始まった会見だが、出てきたのは、問題の核心に対する吟味された説明ではなく、延々たる自己正当化と他者への責任転嫁であった。

 

さすがと思わせた点は、石原氏の政界引退後なお残るニュースバリューだ。かつてないほどテレビカメラが林立し、各局レポーターたちが先を争って質問した。その数は18件。

 

ただし、問題の解明は進まず。

 

築地の移転先に土壌汚染の豊洲を選んだ理由は? 「知事就任時の既定路線だったし、専門家は今の技術なら除去できる、と保証した」

 

東ガスとの交渉経過は? 側近の浜渦武生副知事(当時)に一任しており、「大まかの報告しか受けていなかった」「専門家に任せていた」。

 

瑕疵担保責任を免除した経過は? ここには質問が集まったが、石原氏から新事実の提供はなかった。

 

だが、契約の最高責任者として、もっと関係者から独自に聴取するなど事実解明に協力すべきだ、との再三の指摘に対しては、「では、調べてみよう」と。若干前向きな姿勢も見せた。会見の唯一の成果か。

 

一方で、自己主張は存分にされた。知事としての作為責任は認めるが、協力、賛成した都職員、議会もまた同罪だ。と同時に、責められるべきは、むしろ小池百合子知事の不作為責任だ。豊洲移転は科学的に問題はなく、風評で遅らせ、いたずらにコストを膨張させている小池氏に対してこそ、都民は訴訟を提起すべきだ、とまで語った。科学か風評か。この問題提起だけは受け止めたい。

 

会見冒頭では、田中角栄氏を持ち出し、脳梗塞で言葉を失い疑獄を抗弁せぬまま逝った氏の無念に触れ、自らも軽い脳梗塞で病んだが、何とか言語能力を回復、座して死は待たず、と強調した。恬淡とした老侍になり切れず。なお怨念を糧とする老政治家の悲哀が伝わってきた。


ゲスト / Guest

  • 石原慎太郎 / Shintaro Ishihara

    日本 / Japan

    元東京都知事 / Former Governor of Tokyo

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