会見リポート
2026年10月28日
15:30 〜 17:00
10階ホール
著者と語る『証言・北朝鮮帰国者 祖国に渡った「在日」はどう生きたか』 執筆責任者・石丸次郎さん
会見メモ
1959年から84年まで行われた「帰国事業」で北朝鮮に帰国した在日朝鮮人、日本人家族は9万3340人。当時の在日朝鮮人人口の約16%に相当する。
本書(集英社新書、2026年5月)は日本の社会や政府、報道機関も後押しした「帰国事業」の実態を、当事者であり、その後日本、韓国に居住するに至った脱北帰国者50人へのインタビューから明らかにした。帰国前の日本の状況、帰国事業に参加するに至った背景、北朝鮮での労働、衣食住、教育、現地住民との関係などが克明に記されており、新書で500ページ超に及ぶ。
執筆責任者で、アジアプレス・インターナショナル大阪オフィス代表の石丸次郎さんが、帰国者の写真や手紙などを交え、帰国者の思いや生活を紹介するとともに、いま帰国事業を総括することの意味、意義を話した。
司会 澤田克己 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞社)
会見リポート
北朝鮮帰国事業は「失敗だった」
北野 隆一 (朝日新聞社史編修委員兼社会部記者)
「帰国事業は失敗だった」。石丸次郎さんが長年の取材を踏まえて出した結論は重い。
石丸さんは北朝鮮の内情を探る取材を30年以上続ける。1993年から中朝国境地域を約100回訪れ、北朝鮮を脱出した「脱北者」ら約1000人に話を聞いた。
帰国事業については、国際政治や日朝関係の観点から多くの研究がされてきた。しかし「帰国者」がどんな生活を送ったかを体系的にまとめた記録は乏しいという。石丸さんは仲間と「『北朝鮮帰国者』の記憶を記録する会」をつくり、脱北して日本や韓国で暮らす帰国者50人の証言を集めて再構成。2026年5月、約530ページの書籍として出版した。
北朝鮮政府や朝鮮総連が「発展する社会主義祖国」「地上の楽園」と宣伝する中、日本の自民党から共産党まで主要政党が帰国事業を支持。日本社会での厳しい差別や貧困を背景に、在日朝鮮人らは祖国建設への希望を抱いて新潟港からの帰国船に乗った。
しかし到着した清津(チョンジン)港で街や人々を見て、事前に聞いていたイメージとのあまりの落差に、多くの帰国者が衝撃を受けたという。石丸さんは「清津ショック」と呼ぶ。全体主義国家に閉じ込められて絶対服従を強いられ、物資が欠乏して食べ物にも事欠いた。離散家族となって消息が途絶えたり、日本に残した肉親に支援を求めたりした。90年代の大飢饉や社会混乱で飢えに苦しみ亡くなった人も多い――と振り返る。
石丸さんはそれでも、「帰国してよかった、幸せになった」という人もいたのではないかと尋ねて回ったが、みな「一人もいないだろう」と答えたという。「日本のしんどさから解放されたが、北朝鮮で新たな辛苦が始まり、それが耐えがたかった」との証言も聞いた。
「日本社会にも検証すべき責任がある」と石丸さん。「特に私たちジャーナリストは自身の胸に手を当てて、自分たちが何を誤ったかを考えなければいけない」
ゲスト / Guest
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石丸次郎 / Jiro ISHIMARU
ジャーナリスト / Journalist
研究テーマ:証言・北朝鮮帰国者 祖国に渡った「在日」はどう生きたか
