2024年12月12日 16:20 〜 17:00 オンライン開催
サイモン・スティル 国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長 会見

会見メモ

国連気候変動枠組条約(UNFCCC)のサイモン・スティル事務局長がドイツ・ボンからリモートで会見した。

気候変動対策の国際的枠組みであるパリ協定のもと、締約国は来年2月までに2035年度の温室効果ガスの削減目標を「国別決定貢献(NDC)」として提出することになっている。

スティル事務局長は「大胆な気候変動対策こそがこれからの経済発展の大きな鍵になる」「今年だけでもクリーンエネルギー分野に2兆ドル、日本円で300兆円規模が投資されている」と述べ、再生可能エネルギーへの転換を進めることが経済成長という点でも重要になると強調した。日本については、世界に誇る技術革新力や高度な知識と技能を備えた人材という強みがあるとし、「世界的な成長市場で主導的な地位を確立できる」と述べるとともに、「政府が明確な政策方針を示し、意欲的なNDCを打ち出すことでさらなる投資を呼び込むことができるだろう」とした。

 

The video in the English version is here → https://youtu.be/ZGcQVmiE1Ec

 

司会 江木慎吾 日本記者クラブ専務理事・事務局長

通訳 長井鞠子(サイマル・インターナショナル)

   西村好美(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

G7「特に大きな責任」

福地 慶太郎 (朝日新聞社科学みらい部)

 「特定の国や人物についてはコメントしない」。日本の温暖化対策に対する評価や、トランプ次期米大統領がもたらす影響・・・。日本や米国などをめぐる質問に対して、スティル事務局長は直接的なコメントを避け続けた。この日の会見を楽しみにしていた筆者にとっては、物足りなさを感じた。

 一方、明確に打ち出したのが日本を含む主要国への要求と再生可能エネルギーに対する期待だった。

 スティル氏は、気候変動による災害や経済への影響の悪化を食い止めるには、2030年までに世界の温室効果ガスの排出量を半減させる必要があるなどと指摘。G20(主要20カ国・地域)からの排出が世界全体の8割を占めるとして、G20の国々に大幅な削減を求めた。

 さらに、G7(主要7カ国)は「特に大きな責任」があると強調。会見の約3週間前まで東欧アゼルバイジャンの首都バクーで開かれていた国連気候変動会議(COP29)で、英国のスターマー首相が示した35年までに1990年比で81%削減とする目標を「大変心強い」と評価した。

 英国の目標は、国連気候変動枠組み条約の締約国が自主的に決めるもので、NDCと呼ばれる。各国は来年2月までに国連に提出する必要があり、日本も議論中だ。スティル氏は、世界の再エネへの投資は昨年2兆ドル(300兆円以上)規模に達し、今後も拡大が見込まれると強調。日本が意欲的なNDCを打ち出せば海外から投資を呼び込めるとしつつ、なければ「クリーンエネルギー市場での成長機会を逃しかねない」と警鐘を鳴らした。

 会見では、日本政府が活用姿勢を鮮明にしている原発に対する見解を質問した。スティル氏は「効果やコストの面では、風力と太陽光が他と比べて有力なエネルギー源だ」と指摘。原発の課題として、多大な建設コストと建設期間の長さ、放射性廃棄物の処分をあげ、「すべてを考慮する必要がある」と述べた。


ゲスト / Guest

  • サイモン・スティル / Simon Stiell

    国連気候変動枠組条約(UNFCCC)事務局長 / Executive Secretary of the United Nations Framework Convention on Climate Change (UNFCCC)

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