2024年11月01日 13:00 〜 14:00 10階ホール
ニダル・ヤヒヤー駐日レバノン大使 会見

会見メモ

ニダル・ヤヒヤー駐日レバノン大使が、昨年10月以降のイスラエル軍によるシーア派組織ヒズボラへの攻撃で、甚大な被害を受けているレバノンの窮状、および、日本を含む国際社会への要望などを話した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 池田薫(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

ヒズボラは抵抗運動の中核

平野 雄吾 (共同通信社外信部)

 イスラエル軍がレバノン地上侵攻を開始して1カ月以上が経過した。軍はパレスチナ自治区ガザのイスラム組織ハマスと共闘する親イラン民兵組織ヒズボラの国境地帯からの掃討を掲げ戦線を拡大、昨年10月以降のレバノン側死者は3千人を超えた。駐日レバノン大使のニダル・ヤヒヤー氏は記者会見で「未曽有の人道危機だ」と強調、日本政府をはじめ国際社会に軍の即時撤退実現に協力するよう求めた。

 ヤヒヤ―氏が強調したのは、ヒズボラが誕生した歴史的経緯だった。イスラエル軍は1978年にレバノン南部のパレスチナ解放機構(PLO)掃討を目的に地上侵攻、いったんは撤退したが、1982年から本格侵攻を開始し、2000年までレバノン南部を占領した過去がある。その過程で80年代初頭、イラン指導の下、ヒズボラが生まれた。「撤退を求める国連決議を守らないイスラエルと戦うため抵抗運動が組織された。今ではヒズボラが中核で、レバノン政府は抵抗運動を承認している」とヤヒヤ―氏は言う。「ヒズボラはレバノンの一部だ」

 個人的な話になるが、2022年にレバノンの首都ベイルートで、幼少期にイスラエル軍に親族を殺害された40代女性に出会った。女性はレバノン南部で1993年、空き地で遊んでいたときに、いとこと共にイスラエル軍の砲撃に巻き込まれたという。自分の腕の中で1歳年下のいとこが息を引き取ったと振り返り、「イスラエルを許すことはない」と語った。こうした憎しみが多くのレバノン国民に共有され、ヒズボラ支持につながっているのは間違いない。

 イスラエル側からすれば、ヒズボラは「テロ組織」で、壊滅すべき存在だ。だが、戦線拡大はイスラエルへの憎しみの拡散を意味し、イスラエルの「安全」が遠のくのもまた事実だろう。「抵抗運動の担い手はレバノン南部の市民だ」。ヤヒヤー氏が指摘したヒズボラの実情は、戦闘長期化がさらなる「報復の連鎖」につながることを暗示している。

 


ゲスト / Guest

  • ニダル・ヤヒヤー / Nidal YEHYA

    駐日レバノン大使 / Ambassador to Japan

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