会見リポート
2024年02月26日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「地方自治のいま」(4) 辻陽・近畿大学教授
会見メモ
司会 澤田信孝 日本記者クラブ企画委員(北海道新聞)
会見リポート
地方議会の課題、自治体規模別に議論を
平野 実季 (時事通信社内政部)
地方議員について「ちゃんと仕事をしていないのではないか」という目で見ている人たちが多い―。地方議会を研究する辻陽近畿大教授は、そう指摘した上で、「議員だけが悪いわけではない。議員を厳しい状況に追いやる制度面の課題がある」と訴える。
辻氏によると、首長が提出した議案を修正可決・否決する例が少なく、議会は首長に対する「追認機関」のように映ってしまう。背景には、首長の権限の強さがあるという。例えば、議会が議決した結論に対し再び議論するよう突き返せる「再議権」を持ち、議決を迂回できる「専決処分」も可能。加えて、予算案をつくり提出する権限を持つため、「議員は自分が取り組みたい政策について予算を付けてもらわないといけない」立場で、首長とは「もたれ合い」の関係になりやすい。
また、地方議会を巡っては、都道府県や市区、町村で状況が異なると説明する。例えば、町村議会の議員報酬の平均はその他の地方議員と比べて低く、政務活動費は8割が不交付。「ちゃんと活動しようと思うと、自分のポケットマネーを使わないといけない」状況で、専業化が難しく、成り手不足の原因にもなっている。
選挙制度では、2023年に定数41人に対し66人が立候補した兵庫県西宮市議会議員選挙を例に挙げ、定数が多いケースでは「有権者が一人ひとりの公約を選挙のときに見ていられない」点を問題視。辻氏は「政党を中心とした制度になっていれば、政策と自分の考えとの一致点を見つけて投票しやすくなる」との考えを示した。
このほかにも選挙制度や財政面などの課題や対策の選択肢を挙げ、「自治体の規模の大きさを区別して論じないといけない」と強調。一方で、「制度に起因する問題もある中、どうすればいいという解決策が見えないのが今の地方議会ではないか」と述べていた。
ゲスト / Guest
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辻陽 / Akira TSUJI
近畿大学教授 / Professor of Kindai University
研究テーマ:地方自治のいま
研究会回数:4