2023年09月15日 11:00 〜 12:00 10階ホール
神宮外苑再開発事業撤回に向けた緊急要請

会見メモ

明治神宮外苑の再開発事業について、ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界遺産に関する諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)が7日、文化的資産が危機に直面しているとして、緊急要請「ヘリテージ・アラート」を出し、事業者や認可した東京都に計画の撤回などを求めた。

これを踏まえ、世界イコモス国際学術委員会・文化的景観委員長のエリザベス・ブラベックさん(リモート、写真1枚目)、日本イコモス国内委員会委員長の岡田保良さん(同2枚目)、同理事の石川幹子さん(同3枚目)、「神宮外苑の自然と歴史・文化を守る国会議員連盟」の阿部知子(同5枚目)さん、篠原孝(同4枚目)さんが会見した。

 

司会 江木慎吾 日本記者クラブ専務理事・事務局長


会見リポート

「文化遺産の不可逆的破壊」

森本 智之 (東京新聞経済部)

 石川幹子さんは東京・明治神宮外苑地区の再開発で大量の樹木伐採の可能性があることを自主調査で明らかにし、何度も記者会見を開いて問題提起を続けてきた「第一人者」である。だが、この日の会見の主役は、ヘリテージ・アラートの発出を決めたイコモス文化的景観委員会のエリザベス・ブラベック委員長だった。

 「最大限の懸念を表明する」「文化遺産の不可逆的な破壊だ」「私たち全員がショックを受けた」「SDGsに対するアンチテーゼ」。米国からオンラインで参加したブラベックさんは、きわめて直接的な言葉で再開発事業に疑問を呈した。

 石川さんたち日本イコモス国内委員会がアラートの発出をイコモス本部に要請したのが8月。そこから約1カ月でのスピード発出となった。委員会には約40カ国が参加したが、全会一致での決定も異例だったという。

 その理由についてブラベックさんは「公園として用いられてきた都市のオープンスペースに高層ビルが建てられる。われわれのネットワークの知る限り、このような事例は聞いたことがなかった」と驚きを隠さなかった。彼女にとっては、先進国の首都である東京でそうした開発が行われようとしていることも衝撃だったという。住民との対話が不足していることも問題視し、「民主主義的な国では考えられない」と何度も口にした。

 アラートには強制力はない。だが、ユネスコ諮問機関からの警告はインパクトは大きかったようだ。事業者は9月にも、焦点になってきた中高木の伐採に着手する予定だったが、東京都の小池百合子知事が「伐採前に保全策を示せ」と急遽待ったをかけた。今後、イコモスの求めるような抜本的な見直しにつながるかは見通せないが、事業者や、都がより大きなプレッシャーを感じているのは間違いないだろう。


ゲスト / Guest

  • エリザベス・ブラベック / Elizabeth BRABEC

    世界イコモス国際学術委員会・文化的景観委員長

  • 岡田保良

    日本イコモス国内委員会委員長

  • 石川幹子

    日本イコモス国内委員会理事、中央大学研究開発機構教授

  • 阿部知子

    衆議院議員、「神宮外苑の自然と歴史・文化を守る国会議員連盟」メンバー

  • 篠原孝

    衆議院議員、「神宮外苑の自然と歴史・文化を守る国会議員連盟」メンバー

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