2023年07月24日 16:00 〜 17:30 10階ホール
「アジアの未来と日本の戦略」日米の研究者による提言発表

会見メモ

国際政治、安全保障を専門とする日米の研究者の有志11人が「岐路に立つアジアの未来:平和と持続的な繁栄を実現するための日本の戦略」と題する報告書をまとめた。

有志のうち共同代表の添谷芳秀・慶應義塾大学名誉教授(写真1枚目)、マイク望月・ジョージ・ワシントン大学准教授(同2枚目)と、渡邊啓貴・帝京大学教授(同3枚目)、須川清司・東アジア共同体研究所上級研究員(同4枚目)、芦澤久仁子・アメリカン大学専門講師(同5枚目)の5人が会見した。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

親米自立のアジア外交を

沢村 亙 (朝日新聞社論説主幹代理)

 日米同盟を重視しつつ、豪印などミドルパワーとの連携に軸足を移してアジアに安定と繁栄を築けないか――。国際政治や安保にくわしい日米の研究者や元外交官11人の有志グループが外交提言「岐路に立つアジアの未来」をまとめた。

 「親米自立」の基本コンセプト、「中台のTPP加盟」「反撃能力ではなく専守防衛の強化を」などの提言だけをみれば、中国の軍事的台頭など日本を取り巻く安全保障環境の変化を軽視した楽観論と冷ややかな反応もありそうだ。

 だが、メンバーを突き動かしたのは、むしろ「抑止一辺倒に突き進めば、米中の衝突コースに日本が巻き込まれる」(共同代表の添谷芳秀・慶應大名誉教授)危機感だ。パワーポリティクスの発想に過度に縛られない外交の構想を説く。

 もう一人の共同代表であるマイク望月・ジョージ・ワシントン大准教授は「かつては日本が自立路線をとれば米国に見捨てられるのでは、との懸念が(日本側に)強かった。今や日本の貢献なくして米国は戦略を遂行できない。日本にはレバレッジがあるのです」という。

 この点は、トランプ政権時代にワシントンに駐在し、米国の力の相対的低下と、国内政治の脆弱性が外交に及ぼす悪影響をつぶさにみてきた筆者も同意するところだ。

 芦澤久仁子・アメリカン大専門講師は「11人のうち3人が女性。(男性一色になりがちな)外交安保に関する報告書作成では画期的」と高く評価した。

 惜しまれるのは、昨年暮れの岸田政権による安保3文書の閣議決定前に発表されていたら、よりインパクトを与えたであろうこと。アジア情勢の緊張は続く。今後の関心の広がりと深まりを注視したい。


ゲスト / Guest

  • 添谷芳秀 / Yoshihide SOEYA

    慶應義塾大学名誉教授

  • マイク望月 / Mike M. MOCHIZUKI

    ジョージ・ワシントン大学准教授

  • 渡邊啓貴 / Hirotaka WATANABE

    帝京大学教授

  • 須川清司 / Kiyoshi SUGAWA

    東アジア共同体研究所上級研究員

  • 芦澤久仁子 / Kuniko ASHIZAWA

    アメリカン大学専門講師

ページのTOPへ