2023年01月20日 14:30 〜 15:30 オンライン
「全世代型社会保障」(5) 清家篤「全世代型社会保障構築会議」座長

会見メモ

政府の有識者会議「全世代型社会保障構築会議」の座長を務める清家篤・日本赤十字社社長がオンラインで会見し、昨年12月にとりまとめた報告書のポイント、今後の改革の方向性などについて話した。

 

司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞社)


会見リポート

「拠出と給付」に発想転換を

尾﨑 雄 (日本経済新聞出身)

 清家篤氏が2013年にとりまとめた「社会保障制度改革国民会議報告書」は冒頭の「国民へのメッセージ」が印象的だった。だが、同氏が座長を務めた全世代型社会保障構築会議の報告書は、あっさりしていた。

 氏が会見で強調したのは、構築会議が3つの理念を共有したことである。「人口減少に対する危機感」と「全世代型の意味の再確認」そして「社会保障によってもたらされる個人の幸せは、社会全体の持続可能性に繋がる」である。

 そのうえで、社会保障問題を論じるとき「生産年齢人口を使うことはやめてほしい」と切り出した。「1人の高齢者を○人の生産年齢人口で支える」といった常とう句を使うな、と。思考停止を表す常とう句に依存していては全世代型社会保障の構築はおぼつかないということだろう。

 「レイバーエコノミスト」たる清家氏は、働く意思を持つ人たちを意味する労働力人口を増やすことこそ確かな未来を手繰り寄せることができると信じている。子育て支援策や定年延長など広い意味での働き方改革を大胆に実施し、30代の女性と60代後半の男性の労働力化率を90%に高めれば、2040年代の労働力人口を6200万人に維持できると主張する。

 もう一つの常とう句である「負担と給付」も「拠出と給付」に変えるべきだと語った。社会保障制度は「個人の幸福とともに、社会全体を幸福にするのため」の仕組みだから、国民が助け合いの原資を出し合うことは負担ではなく拠出だと指摘する。難問の財源捻出については「大砲かバターかのトレードオフではない」とキッパリ。改革の財源を最終的に決めるのは「主客」すなわち国民だ、と。

 慶應義塾・塾長を務めた清家氏は「国民会議」報告書では「奴雁」を、「構築会議」の会見では「主客」を強調し、福沢諭吉の言説によって指導層と国民の覚悟を促した。


ゲスト / Guest

  • 清家篤

    「全世代型社会保障構築会議」座長、日本赤十字社社長

研究テーマ:全世代型社会保障

研究会回数:5

ページのTOPへ