2023年02月10日 13:00 〜 14:30 オンライン開催
「雇用問題研究会」(7) 野口悠紀雄・一橋大学名誉教授

会見メモ

一橋大学名誉教授の野口悠紀雄さんが「どうすれば日本人の賃金は上がるのか?」をテーマにリモートで話した。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)


会見リポート

賃上げ 付加価値上げるしか

幕井 梅芳 (日刊工業新聞社編集委員)

 日本の賃金はここ20年間停滞し、隣国の韓国にも追い抜かれる非常事態を迎えている。野口悠紀雄一橋大学名誉教授は、「賃金を上げるには付加価値を上げていくしかない」と強調した。

 野口氏は、賃金の低迷が続いてきた要因について、「付加価値(粗利益)から賃金へ配分する分配率は50%で、20年間ほぼ一定でほぼ変わっていない」とする。企業が利益最大化の行動をとる際、分配率は一定になるという経済学に基づくという。企業が内部留保をため込み、労働者に分配しない論調があるが、それは違うと指摘。「結局、付加価値を増やすしかない」と結論づけた。

 日本経済は、1970︱80年代にかけて付加価値の上昇とともに成長し続けたものの、90年代に入り付加価値の上昇が頭打ちになって成長が鈍化した。中国の急速な工業化に対する日本の対応が、他の先進国との明暗を分けたと野口氏は分析する。日本は、産業構造を維持しながら、円安、賃金固定化政策によって、従来の産業構造を維持した。

 一方、米国は情報通信分野などのIT革命によって、新産業を創出した。韓国も従来の産業構造を見直し、高付加価値化を実現した。高齢化の進展で労働力が減少する状況は、日本だけでなく、他の先進国も同様な状況。それを凌駕する技術力の伸びが経済成長を左右する。専門人材を処遇していくことで、新しい技術開発やビジネスモデルをつくっていく。韓国や米国はこうした行動でここ20年急成長を実現し、将来もこうした構図は変わらないという。

 IT分野をはじめとした専門人材を増やしていくためには、コンピューター分野など日本の大学の教育プログラムを新たに構築していくことが重要だ。一方、企業が専門人材を高く評価することが必要だ。「ジョブ(職務)型雇用は有効だが、これが広がらないと意味がない」と締めくくった。


ゲスト / Guest

  • 野口悠紀雄 / Yukio NOGUCHI

    一橋大学名誉教授

研究テーマ:雇用問題研究会

研究会回数:7

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